なまぐさくてやわらかいぬくもり

※注意
・腐女子の妄想、捏造、なんでも許せる方向け
・モブ視点
・斧神生存ルートで48日後の世界
・流血描写あり
・雅明、斧明、ともに性描写にご注意ください

 ミヤモトアキラは塔のてっぺんにでも閉じ込められているように見える。現実には高層ビルの最上階に閉じ込められているようだったので、まあ似たようなものかもしれない。

 上京して一番驚いたのは東京の人間があまりにも冷たいことだ。見知らぬ相手に、という言葉をつけ加える方が正しいのかもしれない。が、春からの新生活への期待に胸を膨らませていた十八の俺に東京人とはいかなるものかを印象づけるには十分だった。田舎もん丸出しの大荷物を抱えて東京駅へと到着した俺を迎えたのは、東京駅という迷路、暗号のような路線図、せわしなく構内を移動する大勢の人、そして不親切な駅員。もはやラストダンジョンだ。どうして道をきいただけであそこまで不快にさせられるイベントが発生するのかわけがわからない。なぜわざわざお互いに不快になるセリフを選択するんだ。地図を見てもググってもわからないから道をきいているんだろう。(そして周りを通り過ぎていく人、人、人。地元では花火大会ぐらいでしか目にしたことがないような人の多さに俺は新幹線の中で食べたサンドイッチをもどしそうになる。これがこの街では日常なのだ。なんてこった)到着後わずか三十分で俺のように泣き出したくなっている同類の田舎っぺはいないかとあたりを見回せば、やはり似たようなのがちらほらいるので、少し勇気づけられる。よかった。俺は吐き気をこらえて柱を背にキャリーケースの上に腰かける。これまた隣に似たような女子がいる。おお、同類のにおいだ。真っ黒な髪の毛先だけが赤いのは上京前に地元の美容院で染めてきたんだろうか。俺も金髪にする時には理髪店のオヤジにニヤニヤ笑われたよ。何の解決にもなっていないが、みんな同じことなのだと知ってホッとする感覚だ。誰もが通る道なんだろう。俺は鼻をすすった。去年から花粉症なのだ。構内の通路でもらったポケットティッシュで鼻をかむ。それにしても、ここは空気がよどんでいる。
 そんなふうにふるさとを遠く離れ上京してきて二年。一年もたてば方言は薄まり、大学での周囲の標準語に影響されてあっという間に東京しゃべりになってしまった。実家にいる妹とのたまの電話では気持ち悪がられてしまう。しかしそれも悪くなかった。憧れの東京人に近づけている証だ。一人暮らし先の部屋は狭いが、最初におしゃれなそれっぽい部屋を作ることに心血を注いだおかげで大学の女友達が訪れることもある。まだ異性との交際経験はないが、この調子だと三年生の夏休みあたりで俺は大きく一皮むけるかもしれないと否が応でも期待は高まる。(下ネタではない。)金髪もさまになってきていた。いろんな意味で頭皮が死んできているのを強く感じるがこれはもう仕方のないことだ。青春の思い出には変えられん。就職活動が始まれば嫌でも黒染めしなきゃなんないし!
 「顔は悪くないのに」と口にした女子に近寄っていってはなぜか距離を置かれる日々だった。ううん、青春。

 と、大学生活を思うままにエンジョイしていた俺、いや、日本全国すべての大学生たち、それどころか、日本国民全員の天地がひっくり返ったのが一年前。
 ロクテンイチナナ。

 俺はこの春で二十二歳になった。

 吸血鬼になってよかったことの一つは花粉症が治っていたことだ。あの非常に不快な症状との付き合いから解放されたことはたしかに有り難い。杉やヒノキがフィーバーする季節になっても俺の目覚めは爽やかだ。見たか花粉ども。ハハハ。前向きにでもならないとやっていけない。何しろ俺はもう人間ではないのだ。
 夜な夜な人間の女性の血をいただくヴァンパイア、というともともとちょっとエロティックなイメージがあったが、この病にかかった後ではそんな夢は粉々に打ち砕かれた。肩にフケの落ちているおっさんだろうが電車で隣に座るのも遠慮したいほど体臭のきついオタク男だろうが、人間であることには変わりない。人間の血は俺たち、つまり吸血鬼にとっては薬の役目を果たしてくれるらしく、俺たちにとってはどんな相手であろうが貴重な供給源だ。何の薬なのかはよく知らない。吸血鬼になってすぐ一緒に人間を襲ったじいさんが親切に教えてくれた。じいさんは口もとを血で真っ赤にして殺した人間を拝んでいた。俺も一応拝んでから、血を吸った。胃が空っぽになるまで吐いたのは最初の一度だけで、それ以降は美味しいと感じるようになった。とてもうまいコーヒーのような、新鮮なオレンジジュースのような、しぼりたての牛乳のような、とにかくいくらでも飲めるから不思議だった。不思議な味をしていた。人間だった頃に吸った自分の傷口とは違う味をしていることは確かだった。
 相手が女性であれば首元から飲むのも顔が近くて興奮するが、捕まえるのはやはり男が多かった為(女子どもはかなり早い段階で狩り尽くされてしまったのだ)、俺はだいたいふくらはぎを切ってそこから血をもらっている。強く殴ったら気絶するだけの時もある。同じ場所で血を飲んでいるとおこぼれにあずかろうと他の吸血鬼が集まってくるので、ホームセンターで手に入れた魔法瓶に入れられるだけ血液を注いだらさっさと逃げる。余計な争いごとはごめんだ。前に少しでも多く血をストックしようとグズグズと死体にへばりついていたらとんでもないのがやってきて心底恐ろしかった。死ぬかと思った。あんな化け物と出くわすのは、もう絶対にごめんだ。
 金髪はいつのまにか地毛の黒に戻ってしまった。伸びた髪はその時近くにいる奴が持っているハサミで、なければガラスの破片で切った。みっともない頭になっても鏡を一日に何度も確認したりはしない。下手くそな自分作の前髪を誰かと笑いあうこともない。もう誰とも共有することもない。できない。できなくなってしまった。血と、水と、食べものと、寝る場所。寒い日のあたたかい毛布、暑い日の日差しを遮る日陰、熱するコンクリの上を進む底の抜けてない靴。そういうものがいちばんの価値を有する世界。そういう国になってしまった。俺たちの生まれた国。変わってしまった。全部。
 ロクテンイチナナ。じいさんはばちが当たったんだと言った。「いつかばちが当たると思っとった。お天道様はよう見とる」「誰に」「わしらよ。わしら人間が、勝手しすぎたんじゃ」年寄りってのは吸血鬼になってもあんまり言うことが変わらない。「こん体で、ご先祖さまの墓には入れん。つらいのう、つらいのう」そうか、もう家族の墓には入れないのか。俺は破綻した交通機関のことを考える。東京から歩いて帰れるだろうか。「伊能忠敬…」ふふふ。魔法瓶のフタから血を飲みながら一人笑う。春の空なのに、秋空のように雲が高い位置にあった。俺は乾いた眼球で昼間の街を見上げ続けた。胸にでっかい穴があるみたいだ。

 スカウトされたのは俺だけではないようだった。見た感じ、周りには似たような年代の男どもが集められていた。とびっきりでかい高層ビルの一階のロビーで、俺たちは編笠をかぶった高圧的な吸血鬼から説明を受けた。隣に立つ男がつぶやいた。「だせえかっこ」たしかに現代の東京のど真ん中ではあまり見かけない姿ではある。
 説明とはこういう話だ。
・救世主さまのもとで働く人材が足りない。
・今後のこと(育成的なニュアンスだったかもしれない)を考え、年齢的にも体力的にも若者が望ましい。
・熱意のある有能な人物を希望。
・採用後は血、衣食住に困らない生活を約束。
・未経験者歓迎。(?)

 ラストの一文は三番目と矛盾するのでは、と疑問に思ったが、そのクエスチョンマークは吸血鬼が次に口にした言葉でどこかへ消えた。

「募集枠一名の為、体力テストを行う。場所、このビルの一階。外に出たもの、フロアから出たものは失格とする。時間無制限。引きのばしを避ける為に明日の午前零時に邪鬼を一体投入する。生き残った一人を採用する。スタート」

 あっけにとられた俺の横で悲鳴が上がった。ばっと横を見るとつい先ほど俺の横で「だせえ」と口にした男がわき腹から血を流しながら断末魔の叫びを上げている。俺は口を開けてその様子を見た。実際には一、二秒だったと思われる。はるかに長い時間に感じた。

 ロビーのあちこちから叫び声が上がり始め、次第に空間中が痛みと怒りと絶叫で満たされた。絶叫の合唱コンクールだ。

 リードの外れた犬のように前へと飛び出した。駆け出した俺を追ってくる気配がした。頭が真っ白なのに体がこの一年間を覚えていて勝手に動いた。ロビーを全力疾走で横切った。床がすでに血まみれですり減った靴底が滑る。鼓膜をつんざく悲鳴と雄叫びに両手で耳を塞ぎたい。つるつるした床と血でうまく踏ん張れず、ほとんど転げそうになりながら目当てのものを見つけ出した。非常口へのドアだ。ガチャガチャガチャ。開かない。鍵がかかっている。背後から突進してくる気配をすかさず回避し、今度は別フロアへの階段を探す。安い靴の靴音が高く響く。後ろから別の足音も聞こえる。自分の耳だけに届いているのかもしれない。わりと近くで血しぶきが飛んだ。あった。階段だ。
 階段の前には吸血鬼が二人立っていた。その横をすり抜けようとすると大声で怒鳴られた。「おい、失格だぞ」構わずに階段を駆け上がる。背後の足音が止まらない。「おい!」肩越しに後ろを振り返ると、追ってくる相手が吸血鬼の一人を殺しもう一人の吸血鬼ともみ合いになっている。ワンフロアぶん上ると見えなくなった。構わずに階段を上り続けた。四つ足のトカゲのようだった。腕の筋肉がつりそうになってきてもしばらくペースを落とさず、これ以上やると心臓が破裂するだろうなというあたりでやっと上るスピードを落とした。なるべくゆっくり落とした。踊り場に腰を下ろした時には、腕が痺れて使いものにならなかった。
 息が整うまでにずいぶんと時間がかかった。あれはたぶん物盗りだ。何が欲しかったかわからないが、俺の荷物に目当てのものが見えたんだろう。命があるならだいたいのものは奪われても構わないが魔法瓶を渡すわけにはいかなかった。だし、あの様子では殺されていたに違いない。心臓が体から飛び出しそうだ。俺はひんやりとした床の上で大の字になった。ああ、疲れた。逃げるが勝ちというものだ。
 荒い息が落ち着いてくるまでの間、誰もそこを通らなかった。そういえば階段を上っていく間も誰ともすれ違わなかったことに気がつく。床はあの日以降に見たどの建物の床よりも綺麗に磨かれている。俺は編笠姿の吸血鬼が言った言葉を思い出す。救世主さまというのは聞いたことがあった。吸血鬼の間で信仰されている人物らしいが、男なのか女なのかも知らないしほとんどの奴らは会ったことも見たこともないと言う。オニというのもわからなかった。生き物だろうか。何があの空間に入れられる予定だったんだろう。あんな狂った空間には二度と戻りたくないけれど、あそこを通らないと外には出られないのではないか。そのことを考えたらうんざりした。こんちくしょう。ほいほいと誘いにのってついてくるんじゃなかった。二度と知らない顔の誘いには乗るか。
 心臓はいまだにうるさかったが当分静まらなさそうなので、呼吸のリズムが戻ってくると立ち上がった。それから手すりに手を置いて、今度はゆっくりと階段を上り始めた。
 階段は長かった。地獄にこういう種類の地獄があるのではないかと思うぐらいには長かった。(例えば階段地獄とか。永遠に終わらない階段を上り続ける地獄だ)入る前に見たこのビルの外観を思い出しかけ、なるべくそれを記憶から消すように努める。左、右、左、右、左、右、その繰り返しだ。足を繰り返し上へと動かす。下ろす。持ち上げる。下ろす。持ち上げる。その繰り返しだ。簡単なことだ。何度か止まって、膝に手をついた。本当は座りたかった。今座れるなら何でもする、ここで人生終わってもいいとすら思った。でも座らなかった。座ったらもう立ち上がれなくなることがわかっていた。
 相変わらず誰ともすれ違わない。誰の声も聞こえない。ここにもともと住んでいたりオフィスを構えていた人たちはエレベーターというものが止まったらどうするつもりだったのだろうか。非常電源なんかも用意されていたのかもしれないが、もしかしたらってことがあるじゃないか。どれだけ眺めが良かろうがこれだけで俺は喜んで永住権を放り投げるぞ。絶対もらえるわけないけど。こんなところには何回生まれ変わったって住める気がしないけど。ああ、そうか。俺は納得する。エレベーターの音がしないからこんなに静かなのか。ずいぶん高い位置にいるんだろうし相当分厚い壁に囲まれているんだろう。そういえば階段はかなり暗かった。電気系統が死んでるのだから当たり前だ。気が狂いそうになる静けさだ。
 上る階段には終わりがないのではと俺は思い始める。ありえない話だがあり得る話だ。その箱を開けるまで猫が死んでいるかどうかはわからない。階段を上り終えるまでその階段には終わりがあるのかどうかはわからない。似たような話だ。ん? 似ていないか。どうだろう。疲れた。もう休みたい。閉じたまぶたの裏にも階段だ。何回か数秒目を閉じたまま階段を上っている。転ぶ。ハッとする。それを繰り返す。荷物を落としかけて眠気覚ましに自分の頬をかなり強めに叩く。痛い。しかしここで荷物の中身をぶちまけたらそれらは階段の隙間からビルの一階という谷底まで真っ逆さまだ。永遠に戻ってこない。ゾッとする。俺は進む。夢を見ているような気がする。手が壁に触れる。ぺたぺたと冷たいコンクリートに触る。歩いているのに止まっているような気がする。目を覚まさなければいけない。何回触っても次の段差が現れない。次の段差はどこだ。

「あ?」

 顔を上げた。
 階段が終わっていた。

 疲れのあまりどうやら眠りこんでしまったらしい。体を起こすと、階段はここで終わっていた。ここから上のフロアがないとすれば、だとすればここは最上階だということだ。どのくらい眠っていたんだろう。ぼんやりとした頭で背中から壁にもたれる。毛布も巻きつけずに床で寝た体は痛んだが慣れているのでそこまで気にならなかった。「うし」
 立ち上がった。フロアに出てみると、急に足もとがふかふかした。いかにも高級そうなカーペット(カーペットって言っていいんだろうか。なにしろ庶民だから)が床の端まで敷き詰められている。汚れた靴で通るのがためらわれるが仕方がない。あたりを見回しつつとぼとぼと歩いていく。馬鹿でかい一枚ガラスの窓から見える外は日が落ち始めていた。もうじき夜が来る。建物内も薄暗い。帰りのことは考えたくなかった。広すぎるエレベーターホールを抜けた。最上階というとてっきりエレベーターを抜けた瞬間そこが「おれの家だぜ」的なものをイメージしていたが、こういうところもあるんだなと思った。まあ自分には一生縁がない場所だ。それにしてもさっきから気になっていたがえらく天井が高い。本当に高い。これが高級感のある演出なんだろうか。謎デザインだ。
 長い廊下に差しかかった。両側には客室らしき部屋がいくつか並んでいる。どの部屋も閉まっている。目を細めて見る。一番奥の突き当たりの部屋、そこのドアだけが数センチほど開いている。
 戻るわけにはいかなかった。
 足音を立てずに歩いた。カーペットがうまく足音を吸収してくれた。近づいていくにつれて何か音が聴こえてきた。気配も伝わってきた。俺は口の中に溜まった唾を飲み込むこともしなかった。できなかった。今にも両側の部屋のドアのどれかが開いて何かが飛び出してくるんじゃないかと気が気でなかった。なにも出てこなかった。奥の部屋から声がし続けていた。誰かが、何かがその部屋にいるのは明らかだった。生き物が立てる音と気配だった。
 俺は部屋の前に立った。もうその時には、いろんなものがわかるようになっていた。口の中に唾が溜まっているのが気になる。唾を飲み込みたい。

 隙間から見えるのは暗闇だった。

「……」

 激しく軋む音がしている。たぶんこれはベッドが軋む音だ。獣のような息づかいが一つ。さらに一つ。二人いる。色々な音がしている。生々しくぶつかる音と濡れた音、粘ついた音。乱暴な音。乱れる呼吸音。それから猫。猫………
 それが本当に猫じゃないことぐらいは俺にもわかっている。

「……っあ、あっ、ぐ…」

 海面にうつる鯨の影だ。薄暗い室内で、それよりもさらに黒い巨大な影が小刻みに揺れている。窓から入る屋外からの日の光が黒を浮き立たせている。下にいる影に腰にあたる位置をぶつけてこすりつけて犯している。明らかに性交をしているとわかる淫猥な動きで巨体が揺れる。荒々しい動きだった。

「ン、あ、あッ…ああぁっ…」

 最初からわかっていた。甘く濡れた声は男の声だった。かすれた男っぽい声が突かれる動きに合わせてあふれた。抑えきれずに出てしまうといった声で、声の主が強い快感を感じていることが伝わってくる。それは部屋いっぱいに響き渡る交わる音と混ざり合ってとんでもなく淫らに聴こえた。
 中に足を踏み入れなくても漂ってくるきついにおいに鼻の奥がツンとする。ひどい性のにおいが充満している。嗅いではまずいと気づくには遅かった。少しの時間を過ごすだけでも頭が変になるだろうことがわかった。それほど濃い性の香りだった。
 巨大な影が責め立てるように執拗に腰を振った。声がひどく高くなった。やめてくれと言っていた。こめかみがズキズキした。股間が痛くなるような声だった。

 なにを見ているのかよく理解が追いつかなかった。まずいと思った。長く見過ぎたと感じた。一刻も早くここから立ち去らないと。このままではたぶん俺は。その続きを考えて体じゅうの血が冷たくなる感じがした。両足は石像と化している。動かないと。逃げないと。ほんとにこれは、マジで、ヤバいやつだ。
 しかし実際ほとんど俺は死を覚悟している。いやふかしすぎた。覚悟なんていう格好いいものではなく、こう、人生の終わりを身近に感じていた。これはたぶん死んじゃうだろうなと思った。死ぬ確率が高いルートを選択してしまったと半ば知っていた。そういう勘ってたぶん人間にはみんな備わっているのかもしれない。
 部屋のドアから離れようとしたその直前、直前の瞬間。室内から伸びてくる視線に気がついた。涙を溜めた目と目があった。その目はレーザービームのようにドアの隙間を通り抜けて俺の姿をとらえた。黒い目から涙がこぼれ落ちた。距離があるにも関わらずそれが見えた。男の目が驚きに見開かれた。
 息をのんだ。

 鯨の動きが止まった。

「やめろ!」

 次の瞬間には巨大な手が目の前にあった。スローモーションで迫ってくる手のひらに「これは、死んだな」と確信した。頭の隅で、あまりにも刺激的な光景だったのでこれをオカズにあと一回抜いて死にたかった、とも思った。恐怖よりも煩悩が強い死に際とは最悪だ。

「斧神!!」

 それは抱かれていた方の声だった。あんなにきれいな涙は久しぶりに見たと思った。今ではなかなか見られない。
 その声はいつまでも頭に残った。

「どこから入り込んだのだ?」
「下で集めて何やら行なっていたようで」
「見ろ。ゆびと足裏から血が出ている。どう思う」
「殺す前に気を失う男です」
「にしても、骨のあるやつだ」

 こんなところまで上がってくるとは。腹の底にある空洞から出されているような、低く、深い声がつぶやいた。すぐ後にからからと笑った。「採用」横たわった体にごつんと軽く衝撃があった。たぶん靴のつま先で蹴られたのだ。

 死んだつもりでいた。死んだと確信したはずだった。しかし生きているので命がある以上生きるしかない。

 巷で救世主さまと呼ばれている白髪の男は本当は雅様と呼ばれており海を渡ってきたという話だった。外国かと尋ねるとそうではないという。まあ実際に俺が尋ねた先は俺の雇い主となったその雅様とやらではない。あの時大男に抱かれていた黒髪の男が俺の質問に答えてくれた。俺の仕事は彼と密接に関わることとなる。彼の身の回りの世話をするのが俺の仕事内容だった。介護の経験や病人の世話もしたことがなく誰かの世話など何をしたらいいのかもよくわからなかったが、男には片手がなかったのでそのあたりのサポートをしてやってくれとのことだった。男にそれをそのまま伝えるとその時は「そうか」とうなずいただけだった。だからあれをしろこれをしろと言われるのを待っていたけれどいつまで待てど何もない。男は片手での生活に慣れているようで大体のことを一人でこなしてしまう。男はこの最上階のワンフロアをまるまる占領して暮らしているようだった。電気がつかなくとも窓からの日光で昼間はとても明るかった。俺の寝場所は彼の居場所となった。引き取られた野良犬のようにあっさりと住まいが決まった。衣食住が保証されているのは大変な贅沢であり、純粋に有り難かった。
 一年前は何をやっていたのかと訊かれたので大学生だったと答えると男はなんとも言えない表情を見せた。悲しがっているような寂しがっているような怒っているような、それら全部を合わせた奇妙な顔つきをした。どうしてそんな顔をするのかわからなかった。以前は何でもかんでも相手に尋ねて相談に乗るとかなんとか思いつく言葉を並べ立てて親密に振る舞おうとしていたがそんな行為に何の意味もないことを俺はもう知っている。だから何も言わずにただの飼い犬兼お世話係として彼のことを見ていた。男は俺よりも年下だということがわかった。驚きだ。全然見えなかった。相手も俺が年上には見えなかったらしく一言「幼いな」と口にした。どうせ落ち着きがないと言いたいに違いない。
 予期せぬ話し相手が現れたことに対し男は顔には出さないが迷惑がられていないことは確かなようだ。日にちが経ってくると会話の最中に相手がわずかながらも喜んでいることが伝わってくる。発した言葉にちゃんと返してくれる相手がいる。その場限りの相手ではなく明日も明後日も昨日や数日前の会話が続けられるということ。連続した記憶が互いの間で保たれているということ。顔を合わせれば相手に対する記憶がよみがえるということ。数百年ぶりに関係を築いていくという喜びを味わっている気持ちだった。嬉しかった。つくづく人間というのはこういう喜びが必要な動物だったのだと思い知らされる。最初に見た時には実年齢よりもかなり上に思われた彼も笑うと幼い顔つきになった。目の下にこびりついたようなくまと顔面を斜めに走る傷が彼の顔をとても恐ろしげに見せていた。高層ビルの最上階はこの一年間で暮らしてきたどこよりも快適だった。屋上で雨水をためているようで水は困らない程度には使うことができた。下では考えられない生活だった。
 男は自分の氏名をミヤモトアキラと名乗った。「ええっと、なんて呼びましょうか」「アキラでいい」「じゃあ、アキラさんで」そう呼ぶとアキラさんはしばらく黙って俺を見つめている。目つきは鋭いが黒目は大きい。無精髭のはえたあごを指先でぽりぽりと掻いていた。なにかを思い出しているのだと思う。

 アキラさんが人間であると気がついたのはあの大男がふたたび訪れた時だった。初対面の時には極度の緊張状態のせいで気づかなかったが、男は動物の剥製らしき奇妙な被り物で素顔を隠していた。黒魔術のような感じ、っていうかほんとマジで黒魔術だ。イメージでものを語る今どきの若者だからどうか許してほしい。黒山羊の頭から伸びる不気味な角。なんてセンスだ。アキラさんの横にいたはずの俺はあっという間に犬猫のようにして襟首を掴まれて部屋から放り出される。抗議の声を上げるアキラさんと無愛想な男を部屋の中に残してドアは閉まった。「俺が出てくるまで開けるな」ドアが閉まる直前に男が言った。俺は目の前に迫った岩みたいな手を思い出す。金玉の縮み上がる声だ。
 丸一日二人は部屋から出てこなかった。俺は勝手にして過ごした。部屋はたくさんあるからあまり問題はない。アキラさんの話が聞けないのが退屈なだけだ。
 眠って目覚めて太陽が一番高い位置に来る頃に大きな一枚ガラスから一日一日と廃墟になっていく東京の街を見下ろしていたらドアが開く音がした。そろりと廊下の先からのぞいてみると大男が出てくるところだった。その手が音も立てずにドアを閉めた。見ているとこっちへ歩いてきた。

「眠っている。起こすな」

 それだけ言うと階段の方へと消えていった。俺が上ってきた階段にはさらに屋上へと続くドアがあってそのドアが開く音がした。どうやって下へと下りているのかもわからない。
 そっと部屋のドアを開けて中に入ると血の匂いがした。アキラさんはベッドの上でブランケットにくるまって眠っていた。俺はベッド横の床に膝を抱えて座った。血の匂いは吸血鬼のものではなかった。ごくりと唾を飲み込んだ。血は決まった量を与えられていた。薬は満足に足りている。それでもその匂いは口の中に大量の唾液を分泌させた。あの男はこの人から朝から晩まで血をもらっているだけだったんだろうか。そうだと信じるほど俺もガキじゃないし馬鹿でもない。数えるほどしか吸ったことがないが人間の女性の血を飲むと興奮してズボンの膨らみが大きくなることがあった。吸血行為には何かそういう作用があるのだろうか。血をもらいながら行うセックスとはどれほど気持ちがいいんだろうか。アキラさんの寝顔は疲れている。俺はその寝顔をじっと眺める。
 アキラさんの寝顔はやっぱり幼い。

 アキラさんを訪ねてくる男は二人いるとのことだった。一人はあの山羊男。もう一人は俺も知っている男だとアキラさんは言った。「あの白髪頭だよ」山羊男ほど頻繁には現れないが来たら滞在が長いとアキラさんはベッドの上で仰向けになって目を閉じる。それが彼なりの不快感のおさめ方のようだった。吸血鬼二人に囲われているアキラさんは塔のてっぺんにでも閉じ込められているように見える。現実には高層ビルの最上階に閉じ込められているようなので、まあ似たようなものかもしれない。その二人しかここへは立ち入らないとのことだ。他は許されていないらしい。俺は背筋がブルっとする。あの時ほんとに殺されなくてよかった。アキラさんの体には無数の傷跡があったが新しい傷はなかった。大男からつけられる噛み跡を除けば。驚くほど大きな噛み跡だった。不自然な歯型だ。入浴後のアキラさんのトランクスから伸びた両脚にもいくつかの大きな傷跡がある。「刀傷だ」俺の視線に気づいたアキラさんが言う。

「義手がわりにしていた刀に慣れるまで、しばらくかかったんだ」

 その刀は今はどうしているのかと訊くと取り上げられたという。ないと不便だが、今はもう慣れたとも。アキラさんの風呂上がりの濡れた髪は乾いている時よりももっと黒々としていた。一年前よりももっとずっと前、あの日よりもさらに前の彼のことが知りたいとふと思った。何をして過ごしていた人なんだろうか。どうしてこんなところで男たちに抱かれて暮らしているんだろうか。彼らはどうして目の前の男を手元に置いているんだろう。少なくともあの山羊男はひどく彼に執着しているように見える。どういう繋がりが彼らをここで繋ぎ止めているのだろうか。アキラさんは何かを諦めているように穏やかな表情をしている。笑うと泣いたような顔になる。

 山羊男が持ってくる生活物資に板チョコが入っていた日には文字通り犬のように駆け回って喜んだ。チョコレートなんていつぶりだろう。甘いものなんて。ほんの一二年前には当たり前のようにそのへんで立ち寄ったコンビニで買えて賞味期限が切れればあっさりとゴミ箱に捨てていたはずのものが涙が出るほど有り難かった。アキラさんは照れたように微笑んで俺に一枚しかなかったそのチョコレートを分けてくれた。山羊男に放り出された後もドアの前でものすごく長い時間をかけて口の中でチョコを溶かしていた。部屋の中ではアキラさんが男にもチョコレートを分け与えているようだった。話し声が聞こえていたが、しばらくするといつもの声が聞こえはじめて俺はいつまでもそれをドアの前で聴いていた。これまでの人生で食べた中で間違いなく一番美味しいチョコレートだった。胸が破けそうに甘い後味にずっと乾いていたはずの眼球の奥が熱かった。

 白髪の男が訪ねて来た時、偶然にもアキラさんは昼寝をしており俺は起きていて本を読んでいた。ここには一つの部屋を埋めつくすほどの本がある。本なんかここに来るまでまともに手にしたこともなかったが何しろ暇で暇で時間が有り余っているのだから仕方がない。アキラさんが自分から頼んだのか、もしかするとアキラさんを退屈させないようにとこの人が送ってきたものなのかもしれない。その人は音もなく部屋に入ってきた。まったく足音がしなかったので部屋の中に立っているのを見た時にはビクッと肩が揺れた。いつからいたんだろう。驚きに声をなくしていると男が俺を見た。目が合った。不思議な空気をまとう男だった。その男が雅様と呼ばれるその人であるということを遅れて思い出す。男は自然な動作で絨毯の上で眠るアキラさんに近づいた。それから屈みこんでアキラさんの体に覆いかぶさった。俺は慌てて部屋から出ようとその場に立ち上がった。すると雅様は俺に手のひらを向けた。これは。俺は絶句する。アキラさんの首筋に鼻を埋めたその人は目だけで俺に言う。そこにいろと言っているのだ。
 首筋に噛みつかれると同時にアキラさんが目を覚ました。
 獣のようなうなり声だった。太くて低いすごみのある声に全身に鳥肌が立った。アキラさんのそんな声は聞いたことがなかった。耳にしたものの戦意を奪うような、恐ろしいうなり声だった。雅様は構わない様子でアキラさんの体を上から押さえつけて血を吸い続けた。釣り上げられた魚のように暴れるアキラさんの体にのしかかり強く血を吸い上げた。アキラさんが眉をしかめた。その口からうなり声とは別の声が出た。俺は口を覆った。アキラさんの手が何でもいいから危害を加えてやろうとする度に相手の隙のない黒い礼服が乱れた。その抵抗もだんだんと弱まっていく。雅様が熱をこめて吸血するとアキラさんの本能がそれに応えて大人しくならざるを得ないようだった。まるで食事をするみたいに血を吸う音が部屋にひかえめに響いた。それを遮るようにアキラさんの震えた声が時々あふれた。声は次第に変質していった。
 上に乗っかったまま上着とスカーフを放り投げて首元を緩めた男に、アキラさんはぐったりと息を切らしていた。「くたばれ…」アキラさんが毒を吐いても雅様は穏やかに微笑んでいる。その笑い方はアキラさんが一人でいる時の笑い方とほんのわずかに似ているような気がするし全然似ていないような気もする。けれど見たことがないほど白い肌の指先がアキラさんに触れる、その触り方は優しかった。手がアキラさんの前髪をゆっくりと掻き上げた。アキラさんはその時初めて俺がいることに気がついた。

 アキラさんの抱かれる姿を見るのはこれが二度目だった。違うのは、アキラさんを組み敷く相手と、自分が同じ空間でそれを目にしているということだ。アキラさんは見られることを泣いて嫌がった。必死で拒んでいたが力で敵う相手ではないようだった。男の胸を何度も拳で叩いては貫かれた場所を感じて嬌声をこぼした。揺さぶられたらもうどうにもならないようだった。彼を正面から犯す真っ白な体にはアキラさんとは対照的に傷一つなかった。鍛え上げられた肉体が動物的に揺れた。上腕に力が入り、アキラさんの腰を掴む指がその肌に食い込んだのが見えた。アキラさんはさっきからずっと涙を流している。

「俺を、見るな…!」

 悲鳴のような叫びが甘く濡れたあえぎ声に変わる。男が慣れた調子で腰を前後に振ると気持ちのいい場所に当たるのか、彼は黒髪を振り乱して悶えた。唾液がその口の端からこぼれて絨毯に染みを作った。アキラさんを正面から犯す男は彼しか見ていなかった。動くなと言われたにも関わらず俺の存在は忘れ去られたようだ。その目はまばたきをほとんどしていなかった。年寄りみたいな白い髪がアキラさんを突き上げる度にパサパサと揺れていた。汗をかいている以外はまるで生き物らしいところがなかった。こんなに動物的な行為をしているのに。
 むせ返るほどの性行為の音と匂いが室内に満ちていた。アキラさんに与えられる快感はどこまでも彼を追い詰めた。男が小刻みに腰を使うといやらしすぎる音が立ち、それがまたアキラさんの泣き声を悪化させた。その顔が真っ赤だった。気持ちが良くてたまらないと全身で声を上げていた。それは誰にも偽れなかった。
 俺は衣服の下で硬く勃起した自身に見て見ぬ振りをし続けた。痛いほど充血した性器をすぐにでもしごき上げたい。目の前で泣きじゃくる彼の奥を、俺も数分でいいからかき回したい。欲情のあまり頭痛がする。しかしその欲望には行き場がない。
 雅様が繋がったまま深く屈み込んだ。アキラさんが無理な体勢になる。男性器が奥まで届いたのか小さく声がもれた。すり、と雅様が鼻先をアキラさんの鼻にこすりつけた。非常に親しみのこもった仕草だった。
 よく見ると、この二人の雰囲気はどこか似ている。

「斧神とでは、ここがさびしかろう」
「よけいな、世話だ」
「ここを埋められるのが、お前は、大層好きだろうに」

 「喜べ。此度は、少し長く居れる」その言葉に涙と鼻水で子どものように顔をぐしゃぐしゃにしたアキラさんは嗚咽をこぼした。こらえきれずにこぼれたといった感じの嗚咽は本当に子どもみたいだった。それから何度も首を横に振った。雅様がそんな彼の口を強引に塞いだ。塞いだまま、獣の動きを再開させた。二つの肉体がひとかたまりになった。
 同じ男が犯される姿というのは、こんなにも何かをさらっていくものだということを初めて知る。彼は奪われていくし、与えられていく。良いも悪いも判断はつかない。つけられない。俺にはただ見ていることしかできない。

「あッ、やだっ…やだ、やだあぁ…ッ」
「どうして、そう嫌がる。こんなに…」
「ひぁ、あ、ッあ、あーっ…」

 同じ雄に腰を振りたくられ、身体を求められ、強引にひらかれ、アキラさんはとろけきった表情で男の性器を締めつけている。彼の体じゅうからにじむ汗さえも快楽の蜜の味がしそうだった。口からあふれ出す拒否と求める肉体が正反対に働いていてその誤差で本人が一番辛そうだった。見ていてかわいそうになるほどだった。雅様はそれらをすべて見通しているような目でただ彼を見下ろしている。腰の動きが激しさを増し、アキラさんがのけぞった。その全身が痙攣した。両脚が欲しがるように男の腰にきつく巻きついた。さらなる快感と精液を欲しがっているようにしか見えなかった。その扇情的な仕草にどっしりとした男の腰が叩きつけられた。力強く何度も、執拗に肉がぶつけられた。
 アキラさんの声が甘く溶けた。

「ぁああっ……」

 ビクビクと色づいた体が震え、触られてもいない彼の性器が勢いよく射精した。精液が正面にいる男の腹にかかった。絡みついた両脚がきつく男の腰を締めるのが見えた。彼の甘い声が断続的に部屋に響いた。ほぼ同時に男も彼のなかで達したようだった。長い息を吐き、震える腰をこすりつけて、緩やかに幾度か彼の奥を突いた。男の動きにアキラさんの口が開いた。声もなく感じていた。
 男は長い間、吸いついてくるのだろう彼の体内の感触を味わっているようだった。

 可愛いだろう、と雅様はつぶやいた。俺はなんとか一人で熱を発散させた後で、夜に覆われた窓の外の景色を黙って眺めていた。以前はここから夜景を一望することができたんだろうが今は見渡すかぎり暗闇だ。たまにポツリと火が灯る場所があってもそれは夜空に光る星の光のように遠く弱々しい光だった。誰かがあそこで火を燃やしているのだと思ったら、なぜだかどうしようもなくつらい気持ちになった。胸にあいた穴がもう二度と塞がることはないような、それを思い知らされるようだった。もうこの国は助からないのだと思うと、愛国心なんてものとは縁遠い、社会を知らないただの大学生であった自分でさえ、涙をひと粒こぼさずにはいられなかった。
 夜はどこまでも暗く、濃く、ガラスの内側にいる俺たちにも平等に暗闇はさびしかった。

「どうして、この人はここにいるんですか」

 アキラさんの寝息は耳にやわらかい。

「この小僧には、もう帰る場所がない」

 男が言った。静かな深い声で、その声からはそばで寝ている彼への愛情がにじみ出ていた。その声は永遠に彼には届かないのだろうと思った。
 いつか、遠くの火がまた一つ消えた。

「『人間の本性は孤独を好まず』」

 窓を背にし、振り向いた。

「『常に何か支柱のようなものに寄りかかるが』」
「……」
「『その支柱が親しいものであればあるほど嬉しい』」

 男はひっそりと微笑んだ。夜の闇に白髪が灰色がかってくすんでいる。赤い瞳がほぼ黒に見える。

「こいつには、もう私とあの男しかいない」

 星明かりに白い手がアキラさんの胸の上に置かれた。長い指が彼の胸を撫でた。何度も。繰り返し。

「それが忘れられんのだろう」

 俺は二人を見下ろした。

 二匹の同じ獣が、そこにはいた。

2018.4.15