BORDERLINE

※注意!
・Rー18
・腐向け、女性向け描写あり
・原作とは異なる時系列設定の現パロ
・腐女子の妄想
・近親相姦ネタ
・原作では血縁関係のないキャラクターを親兄弟にして楽しみたい管理人の性癖が強く出ております
・何でも許せる心の広い方向け
・というか斧明なら何でもいい
・明受けなら何でもいい
・亮介の命日が今年も過ぎましたね。みなさんどうぞ今年の夏もよろしくお願いいたします(全然関係ない)

上記の内容にご了承いただけた方はぜひスクロールオネシャーッス!

 部活動を終え昼過ぎに忘れ物を取りに学校から一度帰宅すると、育ての親が台所で兄に詰め寄られていた。ただならぬ雰囲気に、居間に入りかけるも廊下へと引き返した俺に、二人は気がついていないようだった。いや、兄は本当は気づいていたのかもしれない。あの用心深い兄が玄関の扉が開いた音を聞き逃すはずがなかった。
 午後は友人たちと遊びに出かけると伝えてあったので、俺が帰ってくることを知らない明は、普段はあまり出さない厳しげな声をして、兄を落ち着かせようとしていた。それと同じぐらい彼が戸惑っているのがわかった。明は男だ。兄も、もちろん男だ。明は母でもあり、父でもある。明は両親のいない俺たち兄弟を引き取った。引き取って育ててくれた。長い間。
 俺の家は俺と兄と明。三人家族だ。

「やめろ…!」

 明の声がした。廊下から見える台所へのすりガラス越しに、兄の大きな体が明へ覆いかぶさったのが見えた。明が抵抗しているのがわかる。

「……ッ」

 俺は踏みこむべきか悩んだ。頭がひどく混乱して、今何が起きているのかがよくわからなかった。入っていって兄を殴るべきなのか、あの兄に立ち向かえるのか。明は俺に聞かれたことをどう思うだろう。今年で高校一年生になった俺を、明はいまだに子どもみたいに扱う。年の離れた兄よりも子供扱いされることが、口で言うほど、俺は嫌いではなかった。俺は甘ったれている。
 兄は昔から俺とは違うものを見ている。
 兄の声は低かった。恐ろしいほど冷静な声だった。

「お前が、嫌だと言うなら、今夜にでもここを出て行く」
「そんなの、誰が許すか…!」
「はじめから、俺はそのつもりだ」

 台所のシンクで影がもつれあう。手のひらにじっとりと汗をかいていた。喉がカラカラに乾く。ガラス戸を一枚隔てた向こう側で起こっている乱暴と異常が他人事みたいだった。山羊のシルエットがなく、兄が普段から素顔を隠している被り物を身につけていないことを知る。
 明が振り上げた手を兄の手がつかんだ。明が叫んだ。

「父親を…っ、お前と呼ぶ息子に…育てた覚えはないッ…」

 明のその言葉は俺の胸を苦しくさせた。父よりもずいぶん大きな体を持つ兄には、効果がなかったようだ。明が台所の床に押し倒され、すりガラスの向こうに見える影に肌色が多くなり、生々しい息づかいと音と動きが台所を別空間にし、育ての親の聞いたこともないような声を聞く頃には、俺の世界はこれまでとは別の何かに変質してしまっていた。同時に奇妙な感覚が俺のなかに生まれ始めていた。

 明は親戚の親戚の親戚のそのまた親戚の誰かの甥で、つまりは俺たちとほぼほぼの他人だった。まだ幼い俺たち兄弟を引き取った時、明は二十四歳だったと明の兄である篤さんはいつも懐かしげに話すが、二十五になっていたと明はいつもそこで言い直す。明は昔から無茶ばかりする、と篤さんは言う。兄は篤さんがあまり好きではないようで、叔父が家に来た日にはだいたいどこかに姿を消した。
 明は男手一つで俺たちを育て、高校に通わせてくれ、兄を大学に行かせてくれた。高校に入ってからも俺に野球を続けさせてくれる。強豪校というわけでもなく、家から近く学費が安いというだけで選んだ学校ではあるが、俺は毎日が楽しかった。兄は大学に通いながら日々アルバイトで稼いだ給料を学費の足しにしている。明の負担を減らしたいと言う。初任給では明に何かをプレゼントしたい、と兄弟で先のことを話し合うぐらいには、兄が父を想っていることを知っていた。血の繋がりがあるのかないのかわからないほど遠い縁でも、まぎれもなく家族であり、たった一人の大事な親だった。親だと思っていた。

 問題のその日から、明の声をよく聞く。行なわれる日はだいたい土曜日だった。土曜日は朝から俺が部活動でいない上に、大学の講義もない日で、明の仕事については出版社が休みであり、つまりは兄と明が家に二人きりなのであった。なぜ俺がそれを知っているかというと、部活動が終わり、以前は友人たちとしていた寄り道をしなくなり、まっすぐ家へと帰るようになったからだ。俺が帰ってきても明は気がつかない。兄に押し倒され、のしかかられて、揺さぶられている。
 俺はそれを息をひそめて聞いている。

「ンッ、ン、ひっ」

 古い家だ。ここに初めてやってきた日も覚えている。床が軋む音がする。父親が昼間から居間で兄に組み伏せられ、腰を打ちつけられている。肉のぶつかる音がする。
 兄が興奮した様子でいることが伝わってくる。影が動くと、ひどい音がする。
 すりガラス越しに見える兄が獣のように父を犯している。

「ぁ、あっ、やだ、こんな、あ、ァッ」

 兄の巨体が明を後ろから押さえつけ、腰を激しく振るう。動きに合わせて明が泣き声をもらした。聞いていて股間が痛くなるような声だった。とても父親の声だとは思えなかった。
 息づかい荒く、兄が腰を前後に振り、明を後ろから貫いているのが見える。影が淫らな動きで体を揺する。明が快感を感じているとしかいえない声で、兄を呼んだ。自分の制服のズボンの前がきつい。

「このまま、出すぞ、」
「やだっ、駄目だ、なか、駄目だってっ…」

 兄のうなり声が聞こえ、明と兄の体がぴったりと重なった。兄がのしかかり、明の言葉が途切れた。かわりに鼻にかかった声が聞こえた。

「ンー…っ」

 自分の息が荒く、耳にうるさかった。影が小刻みに揺れた。その声もだんだんと聞こえなくなり、次第に兄の荒い息づかいと、家の外の蝉の声しか聞こえなくなった。

 すりガラスの向こう側で行なわれている行為が、どれほどひどいものなのか、自分でこの目で確かめる勇気が、俺にはあるのだろうか。
 背中にびっしょりと汗をかいていたが、その場から動くことができない。明を助けることも、兄を諌めることもできない。兄と父を止めるのは、自分にしかできない気がしているのに。

 声を盗み聞きすることがやめられないまま、俺の学校も夏休みに入り、兄が明を抱く回数は増えた。俺はここで完全に確信した。兄は俺が盗み聞きをしていることに気づいている。なぜなら、俺が家にいる日にもかかわらず、兄はその日、台所で明を押し倒した。絶対に俺がいない時間帯を狙って行為に及んでいた兄は、今や、俺に知られることを承知で父を犯している。兄のその変化に、俺はますますどうすればいいのかがわからなくなってしまった。
 兄のことを傷つけたくはない。明はもっと傷つけたくない。ひとよりもひどく崩れた素顔を人前にさらせない兄は、決してその外見を恨まず、環境を憎まず、弟である俺にいつも優しかった。明はそんな兄を息子として愛している。俺たちは家族として幸せであった。今もまだ、幸せであるはずだ。しかし、それらは全部、弱く卑怯な自分の言い訳なのではないのかとも思う。
 いや、言い訳に違いない。

 俺は父が兄に揺さぶられている声を耳にし、はじめから性的な興奮を覚えていた。あの時、最初からあの台所に踏み入り、たとえかなわなくとも兄に拳を向けていれば、うちの家族はここまでこじれずに済んだのかもしれない。今さら言ってももう遅い。

 部活動も休みの日だからと夜通しゲーム機のコントローラーを触っていたら、目が覚めたらもう昼だった。部屋の中は蒸し暑く、シャツが汗でぺったりと背中にはりついている。腹がぐうう、と鳴ったので、二階の自室から出た。昼飯に、明に何か作ってもらおうと思った。
 その気配に気がついたのは、階段を下りようとした時だ。
 もう驚かなくなった声と、気配が、いつもよりも大きく聞こえている気がした。なるべく静かに階段を下りたが、何かがおかしいような気がした。こんなに音が聞こえるのは、どうしてだろうか。
 動物の交わる気配がする。

「亮介が…っ、起きるからあッ…」
「遅くまで、起きていたんだ、大丈夫だ」
「もう、いいだろっ…あッ、あぅ、うぅ…っ」

 裸足で廊下を歩くと、湿った足の裏がペタペタと床にくっついた。昼間の薄暗い廊下を進んだ。台所から声が聞こえていた。
 すぐに気がついた。ガラス戸が少しばかり、開いているのだった。
 寝ぼけた頭はとうに覚醒し、頭を殴られたような衝撃があった。寝起きの口の中が気持ち悪かった。家の中は暑かった。口をゆすぎたいしシャワーを浴びたかった。何よりも兄と話がしたかった。

 このガラス戸を開けたのは兄であることが自分にはもうわかりきっている。

 まず真っ先に兄の背中が見えた。

「起きても、俺は、構わんが…」
「だっ、駄目だ…! お前っ…この…あっ、ぁあ…」
「ハハハ……」

 台所の食卓テーブルの上に押し倒され、明は下半身を露出させられていた。シャツを捲り上げられ、兄が正面から父に挿入していた。兄が腰を動かす度に、明の重みでテーブルが大きな音を立てて軋んでいた。頬を真っ赤にした明が声をこぼした。目が濡れて前髪が汗でひたいにはりついている。兄が前屈みになり、明の体の両脇に手をついた。腰がゆっくりと前に突き出され、明が目をきつくつむり、気持ち良さそうな顔をした。乾いた唇が震えるのが見えた。
 無意識のうちに自分の口元を手で覆った。手が細かく震えていた。

「ううぅぅ」

 明がうなり声を上げ、その口を兄が自分の口で塞いだ。
 兄の表情は見えなかった。
 かがんだ兄の広い背中と父の開いた脚しか見えず、あの裂け目のような巨大な口が明の口を貪るように口づけをしているのだと思うと、息ができず、胸がしめつけられるような気がした。何がこんなに胸を苦しくつらくさせているのかがわからなかった。濡れた音が続き、二人の呼吸が浅く、明の腕が兄の肩のあたりに回った。兄がますます深くかがみこんだ。兄が腰を動かし始めた。

「ん、ンッ、ンッ」

 深い口づけを交わしながら兄が明を突いた。
 これほどいやらしい光景もなかった。夏の日が高いうちから親を犯すきょうだいを見るのはほとんど悪夢に近かった。生々しいにおいと音が台所を支配していた。中学の頃に父親が野球の試合を見に来てくれた時、チームメイトの保護者からえらく若いと話しかけられていた記憶がよみがえる。明は照れていた。小学校の運動会では保護者リレーで一人転んだ。恥ずかしかった。それでも本当は誇らしかった。どんくさい時もあるが、若くて、まあまあ格好いい親父だと。自慢だった。
 息子に体の奥まで侵入され、口内を厚みのある舌でかき回されて、責められて泣いている父親は、はたして自分の父親であっているのだろうか。これは父さんの新しい小説じゃないだろうか。そうかもしれない。そうであったら百倍嬉しい。犯される父親を見て性器を硬くしている俺も、なかったことになれば千倍嬉しい。
 兄は夢中で明を突き上げた。口が離れ、明の両腿が兄のどっしりとした腰を締めつけた。恋人など連れこんだことのない父親のそのしぐさは、息子から見てもたまらなく艶かしかった。
 大きさを主張していた股間に手をやった。ボクサーパンツの上から形をなぞる事ができた。

 兄の分身たちが俺の存在に気がついた。

「はぁっ、はっ、ぁ、ああ、またでるっ…」
「いいぞ、ああ…、顔を、見たい」
「やら、あ、ふっ…ウゥ…ッ」

 明を見下ろしながら、兄は背後の俺を見ていた。幾つもの目が俺を見つめていた。俺は明の声を聞きながら、自分の性器を触り続けた。兄の視線を受けとめながら、父が兄に貫かれて快楽を得ている様子を見ていた。頭が茹だったように熱かった。
 兄の複数の目が、いっせいに細められた。笑っているのだった。見たこともない、いやらしい笑い方だった。
 性器をしごく手の動きを速くした。先端から先走りが垂れて滑りを良くする。

 弟の姿を見て、この兄は喜んでいる。喜んでいる。

「気持ちがいいか…?」

 囁くように口にされた言葉に聞こえなかったふりをした。どちらに言ったのかがもはやわからなかった。明が首を何度も縦に振ったのが見えた。兄が前後に揺する動きを速め、父の足の裏が反動で兄の腿の裏側を叩いた。テーブルがこれ以上ないほど激しく軋んだ。兄の頭部の中心の目が、どれほど嬉しそうに歪んでいるのかを想像したら、後頭部が鈍く痛んだ。
 明が泣いている。甘すぎる嬌声を上げて、気持ちがいいと泣いている。
 その声を聞きながら自身の陰茎を一心不乱にしごく。快感で指が痺れる。

 明の声が今にもとろけそうだった。

「いくッ…いっ…ンっ、んうぅ!」

 明が達する瞬間、兄がテーブルの上に倒れこむようにして父に覆いかぶさった。その腰が小刻みに揺すられた。動きに合わせ、父の脚が幾度も揺れた。揺すられて嬌声が断続的になった。
 兄の太く硬い陰茎が、父の奥をしつこく突き上げているようだった。
 我慢しきれず、ついに自分も手の中に精を放った。

「っ…」

 強い快感に全身が支配され、腰がびくびくと痙攣する。勢いよく飛び出した精液が手のひらにぶつかってくる。
 独特のにおいをさせて、精液は自分の手と廊下の床を汚した。
 兄が深く息を吐き出した。後ろから見る尻に力が入っている。
 父がなかで射精されているのがわかった。

「あっ…ぁや…やあぁっ……」

 満足げなため息をつき、兄の腰が結合部へとこすりつけられる。人間的な、浅ましく淫らな動きで、大きな陰茎ととろけた肉がこすれて、じゅぽ、と濡れた音がした。熱い精液が奥までいっぱいに注がれているさまを想像した。父の口から泣き声がもれた。快感を隠しきれていなかった。

「…めな、さい…っ…」

 明の手が兄の腕を押しのけようとしているのが見えたが、ここから見ても、ほとんど力が入っていなかった。兄がその手をゆっくりと上から押さえ込んだ。兄がまた声もなく笑っているのが後ろからでもわかった。俺を眺める分身たちの目が、ひどく可笑しそうに細められていた。

 父は兄の腕の中で気絶するように眠りに落ちた。
 着ていたTシャツで汚した床をぬぐってその場から立ち去ろうとした。俺を呼び止めたのは兄だった。

「亮介」

 振り向いた。先ほどまで自分がその前にいた台所の入り口のガラス戸が開けられ、兄がそこに立っていた。とても大きな体が窮屈そうで、崩れた頭部の中心の瞳が俺のことを見ていた。
 シャワーを浴びたかった。水風呂でもいい。気温も湿度も高くて何もかもが気持ち悪かった。空腹は変わらないのに、食欲は消え失せていた。口をゆすぎたい。
 手を洗いたい。
 兄を見つめ返し、手に握ったシャツを握りしめた。

「おれ…、どうしたらいい…?」

 声がかすれた。言葉の一つ一つが白々しく、本物でないように響いた。
 兄がゆっくりと胸の前で腕を組んだ。

 長く、低い笑い声がその巨大な口から溢れ出した。目をそらし、風呂場に向かった。目を合わせていられなかった。
 背後では兄が笑い続けていた。

「見ておくといい」

 兄が俺の背中に呟いた。その声に混ざり込んだ様々な感情のほとんどが父に向けられたものだった。ぞっとする声だった。

「俺とお前の父親だ」

 洗面所に入り、内側から戸を閉めた。うるさかった蝉の声が少しだけ遠くなった気がした。
 けれども、兄の声ははっきりと聞こえた。

「家族だ」

 鏡に自分の顔が映った。
 その笑いを含んだ声は耳に残った。

2017.7.16

明が三十代半ば、斧神は二十歳、亮介は十六歳というイメージでいこうにも、どうにも斧神がオッサンオッサンしてしまって弱った(初対面がオッサン呼ばれてたから……)