みやびっ!

※注意!
・Rー18
・【原作沿いではない特殊設定】雅(ドラゴン♂)×明(人間男)で現パロ竜姦ホモ
・竜姦初心者による竜姦
・挿入させたいがためのセックスファンタジー
・明の雄っぱいを吸いたい
・明に母性を求めたい
・明に種づけしたい
・という管理人の性癖が非常に強く出ております
・腐女子の妄想
・なんでも許せる方向け
・危険を察知したらとにかくそっ…とブラウザバックをお願いします

・この話に出てくる『ドラゴン』は一般的なドラゴンとはたぶん異なる完全なフィクションであり、腐女子の妄想の産物です

 帰宅途中に民家の曲がり角に捨てられているドラゴンの雛を見つけた。最初はそれがドラゴンの雛だとはわからなかった。通学路からは少し外れた、歩道のある一か所に下級生が群がっていたので、つられて見に行ったら、ダンボール箱が地面に置かれており蓋が開いていた。中には生き物がいるらしかった。
 ダンボール箱は、お中元の季節によく見かける、あのサラダ油やカルピスなんかが入っている平べったい箱ではなくて、父親が市場から仕入れてくる大量の野菜が詰まったダンボール箱によく似ていた。素っ気なくて、大きい。それがいかにも不自然に歩道の隅に置いてあった。朝にはなかったような気がするのは、ダンボールがそこまで古くなく、汚れてもいなかったからだ。朝方にパラパラと降った雨で路面は濡れていたはずが、箱が濡れていない様子を見るかぎり、わりとついさっき置いて行ったのかもしれない。
 箱を取り囲む下級生達が、後ろからのぞこうとした俺を振り向いて見た。全員が男子だった。どいつもムッとした、嫌そうな、残念そうにもとれる表情をした。
 箱の中がよく見えないので、訊いてみる。

「なにがいんの?」
「わかんない」
「みたことないやつ」
「犬だろ」
「犬じゃないよ。犬みたいな、毛がないもん」

 ケンちゃんの言葉に、一人の男子がすかさず言い返し、ケンちゃんがイラッとしたのが俺にはわかる。続けて訊く。

「おれも見てもいい?」

 そこにいる全員が自分達が見つけたオモチャだと言わんばかりの顔をしていたが、頼めば、下級生達は渋々といった様子で道をあけてくれたので、幼なじみと二人で箱の中をのぞき込んだ。

「なんだ、こいつ」

 ケンちゃんが思わず、といった感じで声に出していた。俺も同じ感想だった。
 それは犬でも、猫でも、鳥でもない、およそ今まで見てきたどんな生き物とも違った見た目をしていた。成長して大きくなった姿を見れば、その時の俺にもそいつの正体がわかったかもしれない。ただ俺は当時小学五年生で、その生き物をテレビを通してしか見たことがなく、しかも目の前の生き物がその動物の赤ちゃんであることなど、想像もつかなかった。
 ぱっと見は、デカいトカゲのようだった。体のどこにも毛が生えておらず、皮膚がつるつるで、短い四本脚を持ち、尻尾が太くて長い。頭と背中に二つずつ突起がある。家の壁に現れるヤモリと全体的に似ていた。しかし大きさが三十センチ物差しぐらいある。瞳孔が縦に細長いのは蛇のようで、金色の瞳に黒い瞳孔があり、その眼が箱の中に注がれる夕方の陽を受けて光っていた。

「トカゲにしては大きいね」

 俺が呟くと、トカゲ(トカゲ?)が首をもたげ、ゆっくりと俺の方を見上げた。その動きに俺も、ケンちゃんでさえ、ビクッと肩を震わせた。噛みつかれるかと思ったのだ。しかし、トカゲは噛みついてこなかった。
 そのトカゲらしき生き物はこちらを見上げて鳴いた。
 正しくは、俺に向かって鳴き声をあげていた。

「明、こいつ」
「…」
「おまえ見てる」

 首を俺の方に向け、ダンボール箱の中にすっぽりおさまったその生き物は、グィッ、グィッ、と何度も鳴いてみせた。後ろで見ていた下級生達は、さっきから蜂の巣を突っついたような騒ぎだ。(鳴いた!鳴いた!)
 後ずさる俺に、その生き物は箱から身を乗り出し、うるさく鳴き声をあげ続ける。明らかに俺を見ている。

「えぇー…」

 箱なんかのぞき込まなければよかったと、早くも俺は後悔に襲われはじめていた。隣に立つ、何にでも思い切りの良い幼なじみが、めずらしく困った顔つきをしていた。わかっていた。その時の俺も困りきっていた。
 灰色がかった体の、小さな前脚を箱のふちにかけて、ガタガタと箱を揺らして健気に俺を呼ぶ謎の生き物は、どう見ても何かの赤ちゃんだった。きっと無責任な誰かがここに捨てていったのだ。子ども達の通学路の近くに捨てるあたり、誰かに拾われることを期待したんだろう。その無責任な誰かを見つけ出して怒鳴ってぶん殴ってやりたかったが、元はと言えば、興味本位でダンボール箱をのぞき込んだ俺がいけないのだ。生き物が入っていることは予想ができたのだから、野次馬根性で見に行くべきじゃなかったのに。
 俺は俺の好奇心が発生させたイベントについていけず、それでもその切なげな鳴き声を無視することもできず、途方にくれて周りで騒ぐ下級生達を見回したが、誰も手を挙げず誰も帰ろうとはしなかった。年下の男子達の行く末を見守るいくつもの目、目、目。
 ケンちゃんを見た。日が暮れるまでまだ時間はある。それでも、空の色がだんだんと変わってきている。
 幼なじみはランドセルを背負いなおし、意を決したように言った。

「……篤さん、今日いないのかよ」

 ここでその名前が出てきたのは、困り果てた俺たちにとっては至極当然の流れであったかもしれない。口にされた兄の名前は俺には最終兵器のような心強さがあったし、目の前の幼なじみにとっても、六つ上の自分の兄は周りのどんな大人よりもはるかに頼りになる存在だった。

「でも…部活があるから…」

 そもそも俺はこのへんな生き物を家に上げることすらイメージが出来ていないのに、ケンちゃんは早くも俺の兄貴を味方につけようとしており、覚悟を決めた顔で俺のことを見た。俺はといえば困惑した表情を浮かべて、言い訳にもならない言い訳を並べながら足元のダンボール箱の中から俺のことを熱心に見つめてくる小さな小さな金色の瞳を見下ろした。トカゲはもう鳴くのをやめ、短い前脚をバタバタと動かし、俺に向かって箱から出ようとダンボールの内側を勇ましく叩いている。

「帰ってくるのは夜だよ…」

 犬や猫を飼いたいと思ったことも一度や二度ではない。しかし、両親が許してくれなかったのだ。何しろペットには手間もかかるが金もかかる。いくら子どもがすべての面倒をみると訴えようが、金を出すのは両親であり、予防接種や病気をした時の診察代や治療代を出すのも親である。それがわかっていたから、同級生達が犬やら猫やらハムスターやらインコやらを飼い始めたと聞いて、そのことがどんなに羨ましくても、あまり親に強く頼むことはできなかった。兄の大学費用を親が頑張って貯めていることも知っていた。
 ケンちゃんは俺の気持ちをわかっている。目の前の生き物を飼いたいか、そうでないかは関係がない。俺が、見なかったふりをできるかどうかだ。ケンちゃんは自分が飼えないことをちゃんとわかっている。自分の置かれている環境を心得ている。だから心の中でどんなふうに思っていても、親にペットを欲しがるようなことはしないし、捨て犬だって絶対に拾ってこない。俺が諦めてここで見なかったふりをしても、絶対に俺を責めたりはしない。わかっている。
 でもケンちゃんは俺が目の前の生き物を連れて帰らなければならないという感情に揺れ動いていることを知っている。はたから見ればちっぽけな罪悪感を感じていることを知っている。自力で生きていけそうにない、このままだと誰にも拾ってもらえずに死んでいくかもしれない目の前の存在に、蓋をして、何事もなかったかのようにいつもよりちょっと遅い時間に帰宅することができるかどうか、それが俺にとっては決して簡単な行為ではないことを隣に立つ幼なじみは全部わかっている。わかっていて、協力するつもりなのだ。

「おれなら、いいよ。おまえんとこの兄貴が戻ってくるまで、おれんちにいればいい」
「わ、わかんない、こんなの、父さんとかあさんになんて言えば」
「篤さんに相談しよう。おれらだけじゃ、ダメだからな」
「にいちゃんに相談したって、ダメだったら、また捨てなきゃならなくなるよ」
「そんなのわかってんだよ。でもおまえが」

 またトカゲが声を出した。グィッ、グィッ。

「連れて帰りたいんじゃないのかよ」
「……」

 その言葉に俺は何も言い返せず、それきり黙り込んでしまった。

 俺たち二人のやりとりを見ていた下級生達は、俺たちが何も行動を起こさないのをしばらくの間眺めて確かめると、顔を見合わせ、みんな揃ってぞろぞろと通学路へと戻っていった。これでこのへんな生き物のそばにいるのは、俺たち二人だけとなり、いよいよ日暮れの時が迫ってきていた。
 ケンちゃんが俺の手を引いた。

「おれと帰ろうぜ」

 幼なじみが小さく言った。諦めがその声ににじみ出ていた。しかし俺はケンちゃんに手を引かれても往生際が悪くその場から立ち去れずにいた。へんな生き物が俺を呼んで前脚でダンボール箱のふちを引っ掻いた。トカゲや蛇と違うのはワニみたいな長くて大きな口だ。その口がダンボール箱のふちや角を噛むせいで、噛まれたところがボロボロになっている。
 たぶん本当ならまだ母親の乳を吸っていなければならない頃なのかもしれなかった。歯がかゆいのか、乳が恋しいのか、何かはわからない。犬や猫とは違うのかも。それでもたぶんこの生き物は赤ん坊だった。体重を支えきれずに鼻を上に向けてボテっと仰向けに転がった生き物はひと際かなしげな声で鳴いた。十一年間しか生きていない当時の俺にもそれが母親を求めて鳴いている声だというのはわかった。

 俺は小学五年生で十一歳だった。俺には兄も母親も父親もいて帰るべき家もあったが、目の前の生き物にはこのダンボール箱しかなかった。この粗末なダンボール箱がこいつの唯一の持ち物で、次雨が降ったら簡単に濡れて潰れて虫がわくような家だ。

 俺が箱の中からトカゲを抱き上げると、思ったよりもずっしりと重たいトカゲは俺の肩にしがみついてきて俺の首を必死な様子でペロペロと舐めた。トカゲの足の裏はヒヤリと冷たく、やわらかい腹は温かかった。「へんなやつ」俺とケンちゃんは顔を見合わせてこらえきれずに口元を緩めて笑った。

 その直後に後ろから声をかけてきたのが学校帰りの高校二年生の兄で、ビックリしてその場で二センチぐらい跳び上がった俺たちがなぜこんなに早いのかときけばテスト期間中で部活動がないのだと言った。

「にしても明、そいつは何だ」

 剣道の竹刀を肩に担いだ兄が不思議そうに手を伸ばし、俺の肩に前足と顎をのせた謎の生き物を触ろうとした。眠たげな生き物の眼がかっと開いて兄の手を見たのをケンちゃんは見た。

「イテッ」

 トカゲが兄の指にカプッと噛みつき、俺は悲鳴をあげてトカゲの頭を引っぱたいた。

 これが俺と雅との出会いだった。

 雅はまったく手のかからないペットだった。ペットらしくないペットだったともいえよう。
 得体の知れない生き物に噛みつかれたことに腹を立てつつも俺たちの期待を裏切らない頼もしい兄は泣きついた弟の為に両親をあの手この手で説得してくれた。拾ってきた雛がドラゴンであるとこちらが気づくのはもう少し後のことで、俺も兄貴もその時はまだ目の前の生き物のことをてっきりトカゲの仲間のようなものだと思っていた。(ここで連れ帰ってきた雛の正体がドラゴンだとわかっていたら絶対に兄貴は両親を説得したりなんかはしなかった。)トカゲなら場所もとらないし、犬猫のように毛も落ちない、暴れて店の商品をダメにしてしまうこともないだろう、などなど。兄は色々な方向から両親を説得してくれ、最終的にエサ代やら何やらの諸々の必要費用は俺のただでさえ少ない小遣いから引かれるということで決着がつき俺はドラゴンの雛を手に入れるかわりに日々の楽しみである買い食いや新発売のゲームカセットや大好きなマンガを買う権利を捨てなければならなかった。そこに関して文句がないわけではなかったが(十一歳の子どもに散歩を約束させるのではなく第一に金のことを言い始める親はクラスで俺のウチぐらいじゃないかとも思った)、とりあえず兄への感謝は大きかったので、兄に抱きついて何度も何度もお礼を言った。

「お兄ちゃんありがとう。ほんとのほんとにありがとう」

 兄は弟の願いを叶えてやれたことに得意そうな顔をして一緒に喜んでくれたが、どうしてもその「トカゲ」のことは好きになれないと言い、俺にしがみついて離れない小さな生き物をなんともいえない目つきで見下ろして微妙な表情を浮かべた。

「変なやつだけど、こんなにひっついてくるのかわいいよ。きっとみんなになつくよ」

 しかし結果からいえば雅は俺以外の家族には徹底的に懐かなかったし特に兄にたいしては絶対に体を触らせずそれは俺が高校を卒業し家を出て一人暮らしをするまで続いたので、この時の俺の言葉は予想を大きく外れることとなったが、それはまた先の話だ。
 「雅」という名前をつけたのは俺でもなく家族でもなく、雅が自分で選んだ名だ。辞書を適当に開いて目についた漢字一文字を十個抜き出して半紙に書いて目の前に並べてやったらトカゲの足が器用に踏んづけたのがその名前だったのだ。その日からへんな生き物は俺の家では「雅」と呼ばれるようになった。トカゲにつける名前ではないと兄や幼なじみに呆れた顔をされても、俺はなんでもよかった。俺は俺の後ろを短い四本足でヨチヨチとついて家じゅうを歩き回るこの小さな生き物のことを早くもかわいいと思いはじめていた。
 雅は俺に懐いていた。なぜこんなにも俺に懐いてくれるのかはわからなかったが、何かがこいつの気に入ったのだろう。飼うことを許された日の晩、母屋の裏口で店の売れ残りの野菜を文句も言わずに食べる雅を眺めながら俺は思った。きっと大事にしてやろう。父や母や兄のものでもない、俺だけのペット。初めて飼うことを許された命。俺のみやび。捨てられていたみやび。

「…大丈夫だよ。おれが、おかあさんになってやるからな」

 食べ終わった雅の顎の下を指で撫でて話しかけてやると、うっとりと気持ち良さげに目を細めた雅が小さく鳴いて俺を見上げる。

 雅はまったく手のかからないペットだった。というのも、エサは店の売れ残りの野菜から晩飯の残飯から駄菓子から何から何まで食べる雑食でほとんど好き嫌いもなく逆に何を食べさせたらダメで何だったらいいのか俺たちもまったくわからなかった。この調べる過程で雅がただのトカゲの仲間ではないことが判明し俺と兄は青ざめた。インターネットで調べたらすぐだった。なんと雅はドラゴンの子どもだというのだから驚きである!日本だと東京の大きな動物園にでも行かないと見ることのできない生き物で俺も動くドラゴンはテレビぐらいでしか見たことがない。大きさはキリンぐらいの高さにもなるというのでおそらく4、5メートルくらい。この時点で俺は卒倒しかけたが、兄もパソコンの前で固まっていた。俺はことの重大さがわからずにとにかくどうやったら両親の怒りに触れずに雅の成長をごまかせるかとそちらが心配でたまらず、兄がおそれていたのはもっと別のことだった。今ならわかるが、兄貴は雅を捨てようと思ったに違いない。動物園でしか産まれないような生き物の雛がなぜあんな道端に捨ててあったのか、そこを不審に思うよりも不気味に感じ、一般家庭にまぎれこんだドラゴンの雛によって平和な暮らしが脅かされ、穏やかならぬことになる予感を感じていたのかもしれない。兄の考えは正しくもあり、間違ってもいなかった。ただ兄は俺から雅を取り上げなかった。幼い弟に恨まれたくなかったのか、理由なんてわからない。兄はとても賢く頭の回転も速かったが、時たま不思議にも好んで行き当たりばったりの計画や作戦を立てることがあり、これもまたそうだったのかもしれない。とにかく俺たちは雅がいずれ巨大オオトカゲに成長する事実に蓋をして見なかったふりをして、雅のエサを見繕う行為に戻った。野菜ばかり食べていればあまり大きくならないかも、そんな思いに望みをかけた。売れ残りが生ゴミにならずにエサになってエサ代も節約できると父と母への印象は悪くない感じだ。
 雅が食べられないのはコンニャクだけだった。グニャグニャした感触が不快らしかった。

 しかし兄がここで心配したような事件や事故(家の屋根をドラゴンの頭が突き破って近隣住民に通報されてテレビ局の人や新聞記者がこの商店街に殺到したり、エサの足らなくなったドラゴンが俺たちや両親を食べたり通行人を食べたりして大騒ぎを起こしてこれまた通報されたり)は今のところ起きていない。なぜなら雅は賢かった。雅は俺が中学二年生の時には言葉の意味とそれが示す意図とを理解して俺が高校一年生の時にはマスターした日本語で俺とつっかえずに会話ができるまでになっていた。ほとんどの言葉は兄が教えたおかげで雅の話し方は俺よりも兄に似て俺からすれば大変生意気なペットになってしまった。雅はまったくペットらしからぬペットで、ドラゴンらしからぬドラゴンだった。日本語をしゃべるドラゴンなんて聞いたことがない。
 俺たちの心配をよそに雅は健やかに育ちその体を大きくしていった。季節を越すごとに外見がドラゴンに近づいていくのは見ていてこわいくらいだった。首が長くなって短い脚が太くなってその先についている爪はナイフみたいに頑丈になり尻尾が伸びてただの突起だった頭には尖った角が二つ。それから何よりも恐ろしいのは鋭い歯だ。白菜ひと玉を丸々咀嚼する時なんか人食いザメのような迫力があって怖い。俺が中学三年生の時に頭から尻尾までの体長が1.5メートル近くになり俺はいよいよヤバいと思った。一緒のシングルベッドで寝るのも最近キツくてベッドも毎晩の負荷でミシミシと壊れかけている。俺は巻尺を手に持ったまま、自室の床でのんびりと寝そべる雅に恐る恐る話しかけた。

「なあ、雅」

 名前を呼ぶと雅は片目をパチリと開けて、眠たげな金色の眼が面倒くさそうに俺を見る。俺はゴクリと唾を飲み込んだ。成長途中の背中の翼がわずかに位置を変える。

「あのさ…もう同じベッドで寝るの、狭くない?」

 雅が俺の言った言葉を理解していることはこの時すでに知っている為、これ以上何かを説明する必要はなかった。雅は本当に賢かったので人間が話す言葉からその意図を理解することができたしもはやそれは人間同士でする会話と変わらないぐらいだった。けれどこの頃にはまだおぼつかなくて、外国人が習得した日本語のように奇妙な文法を使うこともあってそこに普段の生意気な態度とのギャップを感じてそれがたまに無性に可愛かった。

「わたしに、ひとりでねてほしい?」
「そんなことは言わないけどさあ…」
「うそつきめ。わたしがじゃまなんだろう」
「バカなこと言うなよ。ただ、もう一緒に寝るには重いってだけだ」

 本当のことだったが本当はこれだけではなくてこの言葉の後ろにもっと他にも理由はあった。例えば雅の歯が赤ん坊の頃の名残で俺の腕を寝てるあいだに甘噛みしてくるのが痣ができるほど痛いとか、俺がベッドから落ちないように雅が自分の尻尾を俺の体に巻きつけてそれが締めつけられて苦しいとか、なんやらかんやら。ただ一番こわいのは俺が眠っている間の雅そのものだった。雅は俺が眠っている間に俺の体に何かをしようとしている。いや、何かをしている?

「お前が嫌なら、俺が床に布団敷いて寝るからさ。飼い主が床で寝るなんて、変な話だけど…」

 そう言った途端に雅が歯を剥いてうなり声をあげた。ポーズであることがわかっているからこちらも無視。

「お前もわかってるんだろ。もっと大きくなれば、部屋どころか、この家に入れなくなっちゃうよ」

 これは結構深刻な話だった。両親はとっくに雅がただのトカゲではないという事実に気づいており(ドラゴンという単語は俺も兄も口に出せていない)雅が年々動きづらそうに家の中で俺の後をついて歩くのをまるで成長型ブルドーザーが今にも我が家を取り壊しかねないといった感じの目で見てくる。雅を捨てろと言われることはまださすがにないが、このままだとウチの床が抜けるか壁に大穴があくのが早いか、どっちかといったところだろう。
 説得を続けようとする俺の足を雅の尻尾が器用にすくって転ばせた。床に倒れて咳き込む俺の胸を雅が鼻先で突いた。どこか不満げな表情で、詰め襟のボタンを噛もうとしたので、慌てて上着を脱いだ。雅が、その頃にはもうずいぶんとめずらしくなったあのグィッグィッという小さな頃と同じ鳴き声をあげた。

「話を聞けってば」

 雅が急かすままにカッターシャツのボタンも全部開けてインナーシャツもめくり上げると、あらわになった胸にすぐに雅が鼻をこすりつけてくる。ヒヤリとした感触があってその後に下半身にのしかかってくる1.5メートル近くある動物の体の重み。

「兄貴が帰ってきたら、怒られるよ…」

 言っても無駄だ。首を伸ばした雅が俺の左の乳首を舌で舐めてくわえて尖った歯で弱くたまに絶妙な強さで甘噛みをして吸うのはこいつが赤ん坊の頃からのクセだ。いやに切なげに夜鳴きを繰り返す雅に寝不足の頭で乳首を見せてやったら吸いつくなり大人しくなるものだから、こんなもので眠ってくれるのならと習慣になった。もちろん俺も男だから母乳は出せないが、赤ちゃんにとってのおしゃぶりぐらいの効果があるらしく、乳を吸わせると目をトロンとさせて眠りにつく。それがまずかったのだろうか。やめさせなかったらこんなに大きくなっても求めるようになってしまい、つい先日兄に見つかってデカいカミナリが落ちた。(「いつまでそんなことをやらせているんだ!二度とさせるな!」)たぶん兄貴は俺がいつまでも雅のことを赤ん坊扱いするのが気に入らないのだ。立派な雄ドラゴンになりつつある雅の成長を妨げるからかもしれない。兄がこのドラゴンの成長を気にしたことなどあまりないが。
 しかし雅を突き放すことのできない俺はその日も乳を吸わせてしまう。だんだん変な気分になってくるのが最近の困ったことだ。雅が乳を吸いながら大きな体をぐいぐいとこすりつけてくるのも困る。乳首を吸われながらのしかかられて下半身を何度も重たい腹で擦られ続けていると頭がボーッとしてきて力が抜けてくる。雅が反対の乳首も吸う頃には俺は床にぐったりと倒れて雅の頭に片手を置いて息を荒くしている。

「みやび…もう、いい…?」

 鋭い歯が時々肌をかすめてはキュウッとその突起を強く吸われて腰が震える。ズボンの中で自分の性器がジンジンして熱く硬くなっているのがわかる。雅が四本足で真上から俺の体を跨ぎ体重をかけてくるとほとんど身動きが取れなくなった。雅の尻尾が緩やかに足首に巻きついてくる。

「まだ、まだ」
「もおぉ…」

 胸の上から動かない雅の頭を触ると、まだまだ上へと伸びていきそうな水牛みたいな角に指が当たる。濡れた長い舌が俺の乳首を下から横からと舐め上げてドラゴンの口がそれを含んで歯に当たらないように器用に吸い上げる。乳首がむず痒くて股間が疼いてしかたがない。
 自室の床で押し倒されてペットに胸に吸いつかれつつ、無意識のうちに雅の腹に股間を擦りつけて腰を揺すっている。自分の下着の中が性器の先端からにじみ出た先走り汁で濡れているのがわかる。このままだと学生服を汚してしまう。

「みやび、もうダメ、はなれて」

 そろそろ兄が大学から帰ってきてしまう。顔が熱くて心臓がうるさくて乳首がへんに痒くて一刻も早くトイレにこもって性器をいじりたい。胸を吸われてなぜここまで興奮してしまうのかがわからないしつくづくさせるんじゃなかったと思う。雅の首を手で押しのけたら、わりとあっさり乳首から口を離して唾液が糸を引いた。呼吸を落ち着かせようと努めつつ雅を見ると、金色の眼がギラギラと興奮しきった様子でこちらを見つめてくる。昔はこれをしてやると訪れた眠気に目をトロリと潤ませてまぶたを閉じていくさまがめちゃくちゃ可愛かったのに。

「何だよ、しないからな」
「あつしのきたくまで、まだしんぱいない」
「俺が心配なの!」

 大きな声を出す俺の首に雅が大口を開けて噛みついた。今の雅にとって俺の首なんか大根とほとんど同じだ。あっという間に骨を噛み砕いて肉をちぎることができる。でも俺は雅が絶対にそうしないことを知っている。やれるものならやってみろとウロコに覆われた体を叩いて蹴って引っ掻いての抵抗をしていたらさらに喉の筋肉に歯が食い込んで呼吸がしにくくなった。たまらずに息を吸う。
 暴れる足の間にある雅の下肢がグッと深く内側に入り込んでくる。白くてやわらかい腹のもっと下の方で普段は平たいその場所にかたくて熱い膨らみが盛り上がっており、雅が興奮した様子でそれを俺の腿に押しつけてくる。鼻息が荒い。獣の動きに、頭がクラクラする。やっぱり発情している。

「みやび、夜にどっか、抜けよう。な、そこで、」

 喉を解放された直後にすぐさま口から出たその場しのぎの言葉は、雅の腹の下の割れ目から飛び出してその存在を主張する赤黒くグロテスクな突起を見て続きを失った。まだ未成熟とはいえ大きさを増して膨れ上がった、ドラゴンの陰茎だ。

 ドラゴンの陰茎から滴る透明で粘ついた液体は雌の体内に出される雄の精子を保護する我慢汁のような役割を果たしているらしいが、俺には関係のない話だ。でも兄が帰ってくるそのギリギリまで閉じた股の間にドラゴンの性器を突っ込まれて背後から太もものあいだをヌルついた感触に突き上げられていると自分がドラゴンの雌にでもなったような気がしてくる。乱暴な快感に足が痙攣して腰が痺れて俺の性器が垂らした先走りが部屋の床を汚す。自分がペットにさせていることによる罪悪感と背徳感で胸が苦しいのに頭が白くぼやけて何も考えられなくなる。一体なんてことをさせてるんだろう。

「ごめん、ごめんみやび、みやび」

 でもきもちいい。きもちがよくてたまらない。無意識のうちにもっとやってもっと突いてと口走り雅の性器はさらに大きくなってしまいガクガクと一層激しく後ろから揺さぶられる。まるで交尾だ。こんなふうに突かれると下に聞こえてしまうし兄貴が帰ってくる。それでもとろけた股間を雅の雄にこすられると身体の芯が甘く締めつけられて覚えたての快感にジュウッと全身が蜜をこぼすようだった。俺のトロトロにとけたペニスが押しつけられた床に擦りついて光る淫らな跡をつくる。

 雅は賢く用心深く嫉妬深く独占欲が強かった。何をどうしたら俺と一緒にいられるかを四六時中考えていて俺と別々で寝ることさえ嫌うほど俺を独り占めしたい感情にかられており、それは見ていて呆れるほどだったがその倍以上にそんな雅が可愛かった。なんとか一緒にいたかったが、成長し続ける自分の姿に俺と引き離されないためにも家を出ていくと決めたのはなんと雅の方だった。高校二年の冬に母屋の裏の窓から飛び立っていった。それきり約一年間一度も帰ってこなかった。俺が受験勉強に追われて週一回は社会人となった兄の暮らすアパートに通って勉強を教えてもらって寝る間も惜しんで問題を一問でも多く解いている間にも雅はどこにいるかも知らせず居場所もわからなくて、俺が東京の大学を受験して合格通知をもらって引っ越し先を決めて荷造りをして家族や幼なじみのみんなにお別れを言ってお別れパーティーなるものをひらいてもらって数日後見送られて引っ越し先のアパートの最寄り駅に着いた時にはもう夜だった。アパートまでの十五分の道のりで雅は夜の闇の中から現れて人気のない道路に降り立ち俺を見下ろした。俺は肩にかけたスポーツバッグを落としかけたが、それは驚きからではなく、雅の翼の風圧のせいだった。

「これまた、ずいぶんとでっかくなったなぁ」

 俺は怒るよりも呆れるよりも半ば感心してかつての自分のドラゴンを見上げた。赤ん坊の頃には灰色がかった体が成長するにつれて白さを増していき出て行く時にはほぼすべてのウロコが白かった。夜の暗闇でもぼんやりと発光するぐらいに蛇にも似た体はぬるりとなめらかできれいだった。金色の眼がギョロリと動き、俺の全身を確かめるように上から下まで眺める。出て行く時よりもさらに大きくなっていたが、たしかに俺のみやびだ。

「俺のところには、お前はもう帰ってこないと思っていたよ」

 笑って呟いたら尻尾で頬をばちんと叩かれてビックリして今度こそバッグをアスファルトの上に落とした。叩かれた方の頰を片手で押さえて自分のペットを見上げた。雅の目の奥がメラメラと怒りに燃えて鋭い光を放っている。

「許せん発言だ、この、馬鹿、この馬鹿!」
「ばっ、バカはお前だこの野郎!ふざけるなよこのクソドラゴン!飼い主をぶったな」
「黙れ!」

 雅が派手に咆哮して周囲の民家の窓をガッシャンガッシャン震わせた。雅の怒りにまかせた吠え声はサイレンどころじゃない大きさでそれはもう爆発音だった。慣れてない人間なら腰を抜かして立てなくなるぐらいの迫力があった。ただし俺はこいつの飼い主だ。慌てて雅の口を塞ごうと駆け寄って雅の首に飛びつくようにしがみついた。家の中から騒ぐ声とその後すぐにあちこちから窓が開く音がしはじめて俺は早速泣きたい気持ちで新居の地でのついに通報を覚悟したが気づいた時には体が勢いよく宙に浮き上がっていた。手に引っかかっていたスポーツバッグの取っ手をとっさに握り直して雅の首にしがみついた。足元に地面がない。俺の上着の襟の部分をくわえて雅が空中に飛び上がったのだ。
 ここで俺が悲鳴を上げてパニックにならない程度にはまともにものが考えられていたのは俺が雅に乗り慣れていたからでありただそれはあくまで落ち着いた状況で正しい位置である背中にというだけで決してこんな襟首をつかまれて空中飛行した経験があるわけがない。雅の首にしがみついて恐怖に声をなくして固まる俺を雅は思ったよりも近く、駅の裏手に下ろした。
 外灯が明るく地面を照らしておりホームには人影もなく電車がくる予定もしばらくなさそうで駅のすぐ裏だというのに東京とは思えないほど人気がなかった。東京にはどこにでも人があふれているイメージしかなかったから意外だった。アスファルトに手をついて気を落ち着かせている俺を見ているのは雅しかいなかった。春の夜の匂いがあたりに漂っていて甘くみずみずしい空気が肺を満たしていくのを感じる。俺は震える足で立ち上がって雅に近寄り自分のドラゴンのたくましく太さを増した首をしっかりと両腕で抱きしめて頰をくっつけた。

「本気で、もう帰ってこないって」

 自分の声がかすれていてとても小さな声しか出てこずに雅に届いているのかもわからなかった。ぎゅうっと強く腕に力を入れて雅の首を抱きしめ、指先で顔を触り、鋭く突き出た牙を触った。雅が口を開けたのがわかった。開いた口が俺の手をひかえめな動きでくわえ、尖った歯が懐かしい強さで甘噛みをした。

「雅」

 グィッグィッ、とあの鳴き声を喉からあげて雅が俺の手を長い舌で絡めとった。温かい舌の濡れた感触が柔らかくて懐かしくて俺は一年ぶりに大きく成長した雅の鼻先に口づけをして思う存分自分の可愛いペットの頭を撫でまわして愛するドラゴンの名前を連発した。

 ちなみにこの鳴き声が特に甘えている時に出す鳴き声だということを俺は早いうちから知っていたが雅は俺がきっと知らないと思っているから出しているのであってきっとバラしたら二度とやってくれなくなるそんなのもったいなさすぎる絶対に言ってやらない。かわいい雅。俺のドラゴン。いつまでも俺のみやびでいてくれ。でも乳を吸うのはそろそろやめてほしいしやめなければならない年頃だと思うから頼むから乳首を吸いながら挿入するのだけはほんとにやめてほしい。すでにお前の飼い主は何かに目覚めかけているんだ。恐ろしいことにけっこう前から。

おまけ

 この大都市東京で体長3メートル近くあるドラゴン一頭が騒ぎを起こさないように生活を送るのはどれだけ難しいことなのかこれからのことを想像すると胃がキリキリと痛むが思い悩む俺とは反対に当のドラゴンは非常にあっさりとしていた。騒ぎになれば俺たちは引き離されてお前はどんなところへ連れて行かれるかわからないんだぞ外国だともっとドラゴンの数が多いから日本の動物園は繁殖で数を増やそうと貴重な数頭で努力を続けているお前は世間知らずだからそんなことが言えるんだうんたらかんたら。俺の説教や注意なんて雅にはなんの意味もなくて雅はドラゴンのクセに鼻で笑って俺の話を聞き流してしまう。思えば実家にいた頃からこいつは大胆だった。なぜそこまで楽観的で絶対的な自信を持っていられるのかがわからないが実際雅のやることで取り返しのつかないところまで何かを間違ったことなどあまりないのだ。つまりまた今回も雅はうまくやれるのだしそれはこのドラゴンが兄も認めたようにいまや俺よりも賢い頭のつくりをしているからかもしれない。認めるのは大変癪であるが。
 それにしても大胆にもほどがある。

「雅ッ、おすわり、おすわり!」
「私を犬扱いするな」
「おまえ、教えただろぉ…!」

 アパートの自分の部屋で丸三日かかった荷ほどきがやっと終わったと思ったらその日の午後十一時過ぎに雅がやってきて春から通い始める大学の下見に行こうと言う。日中どこにいるのかも夜はどこで寝ているのかもわからずに街が静かになった頃に気まぐれに会いに来ては去っていく雅はこちらに来てからはずっとこんな調子だ。その提案に、雅がめずらしく俺の行動にあわせてくれたことが嬉しくて単純な俺は一も二もなく雅の背中に部屋の窓から飛び乗った。実家から使い慣れた手製の鞍を持ってきていたがまあ大学はそう遠くないし大丈夫だろうと思い寒さ対策にコートの前をしめただけで跨がった雅の首の下の方を軽く叩いた。
 雅はなるべく緩やかに速度を落として飛んでくれたが俺の引っ越してきた街もわりと静かに見えても都会はやはり都会で建物が多くて夜でも街が明るくて高い位置を飛ばないとどこで見つかるかもしれないので俺は上空の寒気に歯を震わせて雅の首にしがみつきなるべく体を低くして雅と密着する。素乗りをするのは久しぶりだったが雅は上手に飛んでくれる。厚手のズボンをはいているおかげでウロコも痛くない。
 問題はほとんど人気のない夜の大学の校舎の上を目一杯旋回した後休憩がてら大学の裏の裏山に降り立った時に起こった。自然に囲まれた環境で勉学に集中ができるとかどうのこうのパンフレットに書いてあったがあれを理由にここへ進学を決める生徒が一体どれだけいるというんだろう。山と森と雑木林の間のような微妙な自然空間だったがとにかく雅が隠れられるほどの場所ではあるのでこれは昼間来て確認をして使えそうだったらこれからのキャンパスライフで雅との待ち合わせなんかに使えるのでは?とも思ってとにかくホッとした。都会というものはとにかく人がいる場所ばかりでいけない。これではドラゴン一頭隠して暮らすのも一苦労である。

 さて。ここで話は変わるが、雅はここ一年であの悪い癖をなおしてくれたものだと俺はすっかり勘違いをしていた。実家にいた頃とは180度異なる雅のひかえめな愛情表現が俺にそう判断をさせる原因となった。再会後は普通のペットと飼い主として雅を愛してやるべきであると俺は一人胸の中で決めていた。少し遅れてしまったがまだ遅くはない。何しろこいつはまだ成長途中なのだ。ただの飼い主としてこのちょっと生意気で反抗的で癇癪持ちで扱いづらいドラゴンを俺は文句を言いながらもこれからも大事に育てて守ってやるのだと。勝手に決めて満足していた。阿呆だ。そうやって夜の木々を眺めて校舎の方に人がいるかどうかも確認できるかと雅に背を向けたら後ろからのしかかられてあっというまに土の上に押し倒されて一瞬何が起こったのか全然わからなかった。頑張って仰向けになろうとする俺の上着に雅が噛みついてきて俺はとっさに雅の頭を叩いた。構わずに噛みちぎろうとする雅の首を両手で掴み必死に破らないでくれと頼んだ。ただでさえ多くはない仕送りで節約していかなければならないのに貴重な冬物の服をダメにされたくはない。雅の眼は一年ぶりの欲を湛えて夜の暗闇に光っていた。その目が、自分で脱ぐかコートを食いちぎられるか、どちらか選べと言っている。
 騙されたことに気づいても遅かった。なぜ忘れていたのか。雅は俺を油断させて噛みつくのが大好きなのだ。

「外だぞ、やめろ、マジで怒るぞ…!」
「やってみろ。殴るなり蹴るなり、すれば良い」
「っ…、雅、雅ダメだ、こういうのはもう、」
「それはお前が勝手に決めたことではないか」

 長く厚い舌でむき出しになった尻の穴を何度も繰り返し舐められ舌先で突っつかれては溜まった唾液と漏れ出た体液を吸い上げられてその度に身体がビクビクと震えた。一年ぶりの刺激に自分のそこが記憶から与えられるはずのものを再現して浅ましくヒクついているのがわかって羞恥心で顔も身体も熱い。全身が熱く、上半身は服を着たままなせいでインナーの下を汗が流れるのを感じている。春の土の匂いが鼻腔を満たし木々の下は上空よりもわずかに暖かくそれでも屋外で裸になるなんてまるで変質者だ。下半身はズボンを脱いで靴下一枚だけといったありさまでこれは見つかれば確実に通報ものであろう。午前一時過ぎの闇と人気のない校舎に心の底から感謝したい気持ちだったが俺の身体はそれどころではない。

「久しぶりで、そんなの、入んねえって…」
「だからやっているだろう。お前も協力しろ」
「うぅー…」

 ドラゴンの唾液にまみれた尻の間に恐る恐る手を伸ばして濡れた穴に指を入れようと試みるも、緊張からうまく指を入れることができない。ヌルヌルするだけで、指先がうまく入らない。サポートするように雅の舌が俺の手ごと尻の割れ目を何度も舐め上げる。その舌の熱さに欲情して興奮がますますひどくなって目の裏が泣く直前みたいに熱い。もどかしかった。地面についた膝が土を滑り、互いの荒い息づかいがあたりに響いていた。
 春の夜の匂いはどうしてこうもみずみずしく、心を浮つかせるのだろう。なんだか胸がムズムズして落ち着きのない気分にさせられるのは、この匂いのせいなんだろうか。指が三本、それが雅の待てる限界だった。腹の下部分の割れ目から姿を現した巨大な陰茎は硬く勃起し粘液をまとわりつかせて濡れてなんとも言えない特徴的な臭いを放っていた。懐かしい臭いだ。口の中に唾液があふれてきてなのに喉がカラカラにかわいている。俺が指を抜いた直後にその体躯がずっしりと俺の上にのしかかってきてペニスの先端が性急に俺の尻の間を探り当てた。思わず伸ばした片手で雅の前足を掴んだ。
 なんか前よりデカくなってないか?

「や、やっぱり無理…!」
「今さら、遅い」
「アッ、あ、無理、無理入らないっ…ぃ…ッ」

 グウゥとうなり声をあげる雅が構わずに猛る陰茎を突き入れてきてほどほどに解された後ろがどんどん拡がっていく。最悪なことに一年前に散々侵入されたそこは俺のドラゴンのかたちをちゃんと覚えていて裂けそうな痛みと同じくらいに雅のペニスを受け入れようと太い雄の先端にまとわりついた。身をよじって逃げようとする俺の胸にすかさず雅が吸いついてきて乳首を甘噛みしたものだから一瞬気を抜いてしまった俺は入り口から力を抜いてしまいそれを見逃さなかった雅に一息に奥まで侵入される。きゅうっと締めつける俺の身体。圧迫感に息が止まる。
 雅が満足げなため息をついて俺の乳首をねっとりと舐め上げる。萎えていない俺の陰茎から垂れる先走りが触れる雅の腹を濡らす。とにかく苦しくて、熱くて、あまりに懐かしい。ちくしょう。最悪だ。

「ダメだ、おく…入りすぎ…」
「私の形が、そのままだ…。変わっていないな」
「当たり前だ…!この、このクソッ…」

 毒づこうとしたがそれはかなわない。雅が待ちきれずに俺のなかを突き上げ始める。
 もう一度言う。ここは外だ。春から通う学校のすぐ裏だ。早くやめさせないと俺の想像以上にとんでもないことになる。校舎も本館の方は無人というわけでもなさそうだったしいくら真夜中といっても屋外、ああこんなところで何をやっているんだ俺は!
 一年放って置かれた俺のなかは雅に突かれるごとにその巨大な陰茎を甘く締めつけてまとわりついてひどく悦んでえぐられる強さに奥からどろどろに熱く濡れていく。獣の前後運動をしながら乳をきつく吸われるとたまらずに腰が浮いた。なんてこった。悪癖もなおっていない。歯が噛みちぎらないほどの絶妙な強さで突起を甘く噛み、噛まれながら奥を突かれて、二重の快感に頭がへんになりそうになる。これが嫌だったのだ。この癖が嫌で、嫌で、これをし始めた時に俺は雅の育て方を間違えたことを思い知った。奥をいっぱいにかき回されて下腹が疼いて抑えきれない嬌声が口からあふれる。雅があの鳴き声をあげながら俺の脚をさらに広げてもっと奥深くまでペニスを突き入れる。引き抜きかけて突き入れる。また抜きかける。濡れた肉壁を擦り上げながら入って来る。ひどい水音が立つ。気持ちがいい。ずっとこれだけやっていたい。きもちいい。よすぎる。これがあったら受験に絶対落ちていた。

「胸もう、やだ、吸うな、みやび」

 ドラゴンの首を両手で押しのけようと手に力を入れる。雅が舌全体で乳首を押し潰し、器用に歯に当たらないように小刻みなリズムで小さな突起を吸い上げる。

「アッ、ぁっあっ」

 甘い声が口からもれ出て吸われる乳首の裏側のもっと奥の方がキュンキュンと疼く。まだ雅が雛だった頃を思い出して涙が出そうになる。実際俺は軽く泣いている。なんで泣いているのか自分でもよくわからない。雅は俺が乳を吸われて快感を覚えていることに何年も前からとっくに気がついている。わかってこいつはやっていた。奥に熱い先端で何度も触れられしつこく獣のペニスで内側を擦られているのに俺は強引に俺を犯す雅のことが可愛くてしょうがない。だって何を言ってもやってもこいつは俺の雅だ。あの粗末なダンボール箱の中にいたみやび。俺を呼んでいたみやび。母親にも父親にもなれなかった小学五年生の俺。

「みやびっ、みやび、みやびぃ…っ」
「お前は、私のものだ、明、ずっと、私のものだ」

 私の母になると言った言葉、忘れたことはないぞ。

「どこにもやるものか」

 顔の前で囁かれた言葉に口を開きかけて閉じてまた開く。こちらを見下ろす雅の金色の眼が枝葉の間から差し込む夜の空の光で光っている。
 衣服が土まみれになるほど激しく突かれて揺すられて、下半身が自分の出した精液と雅が中に出した獣の精でぐちゃぐちゃになって汚れてもそれでも交わりを止めることができなかった。獣の雌になり果てた俺のとろけた身体を舐め回し雅は快感と興奮に眼を赤くして俺の体を飽きずに喰らいつくし孕ませる勢いで執拗に奥に種づけをした。ドラゴンの子どもを孕んだらどうしようかと考えるぐらいには頭がバカになっていた俺は夜の暗がりで自分のドラゴンと終わりのない快楽をむさぼり、今後の新生活のことをすっかり忘れて交尾にいそしみ続けた。

 そして春。
 桜が咲く時期を迎えいざ大学に通い始めると、思った以上にその裏山が校舎に近く校舎の窓から木々の向こうまで見渡せることを知り、つくづく都会は飼いドラゴンと隠れてセックスをするには難しいところだと、あらためて肝を冷やしたのだった。

2017.2.6