オクトパスラヴ

※斧明タコ姦でRー18。軽い♡喘ぎ、斧神がタコ、性的描写ありの地雷まみれです。ご注意ください。タコの生態については深く考えないでご覧ください。

 蚊の第一育成所の地下で、明は雅の右腕である男と対峙した。互いに好意を抱いていることを隠さずに、認め合ってきた仲であったが、やはり戦いは避けられそうにない。
 明は入ってきた扉に背を向けて、見間違えようもなき男の姿を正面に迷いなく抜刀した。憎みあっていなくとも、やらなければならないことは、ある。男は黙っていた。一本の長い腕でぬるりと斧の柄をつかんだ。吸盤が木製の柄にくっついた。
 武器を構えた大蛸の体が膨らんだ。深く息を吸って、吐く。室温の低い空間で、明は海のにおいを感じる。
 友は蛸の姿をしている。

 男の体は全身が椅子におさまりきらず、最初から腕のほとんどが床にあふれている有様であったから、明がその長い腕に捕まるのもすぐだった。何しろリーチが違いすぎるのだ。
 斧神の無数の腕は明の体をいともたやすく拘束する。手が多いから。

「なんてことしやがる、卑怯者…!」
「殺し合いに、卑怯も何も、あるのか?」
「まともにやれよ!」

 斬りかかろうとした明の顔面に、なんの前触れもなく塩辛い水が斧神の口から噴射され、驚きに明は刀を手から落としてしまった。まともに食らってしまった相手の体液は海水に似た味がした。明が咳き込んでいる間に、あっというまに距離を詰めてきた男は好機を逃さなかった。落とした日本刀は遠ざけられて見えなくなった。明の全身に男の手足が巻きつき、そこで明は遅れて、自分が笑えない状況に陥ったことを知った。

「ふざけるなよ、あんた、マジで、おい」

 先ほどまでの触れたら切れそうな緊張感が消え、別の緊張がじわじわと明を焦らせはじめる。斧神が何かを考えているように、不穏な腕の動きをしているからだ。
 地下は寒い。吐く息がわずかに白い。胴体や脚に巻きついた男の手足は、温かい。じんわりと生き物の熱が伝わってくる。明は濡れた顔を振って水気を飛ばした。
 男の小さな二つの眼が明を見ている。

「おい」
「仲間になる気はないのか」
「だからないって」
「フム」
「離せ。あんたも斧を取れ」
「それは困る」
「ふざけんな。馬鹿野郎。このタコ…」
「お前が欲しい」

 明が斧神を見返した。

「どうやったら、お前はこちらに来る?」

 たくさんあるうちの二本の腕が、明の両頬を撫でる。両頬から、首筋へ、鎖骨とうなじへ、移動する。なめくじの通った跡のようなものが日に焼けた肌を透明に光らせる。
 真剣だった。男は欲求を感じている。蛸の腕が濡れた髪の間に入り込んだ。黒髪がかき上げられ、その手つきに男の情の全部が込められていた。腕の先がまぶたに触れかけて、明が一二秒目を瞑った。その表情さえも、離れた位置にある両眼で見つめていた。
 人間であったなら、どれほどこの思いが伝わっただろう。

 目を開けた明は、斧神を睨みつけた。

「刀を寄越せ」

 地下の鉄扉が外側から激しく叩かれた。斧神は巨大な体を滑るように移動させ、重みで扉をふさいだ。ふたたび鉄の扉が大きく鳴り、取っ手が乱暴に動いたが、柔軟な筋肉を持つ腕が一ミリたりとも開けさせはしなかった。ドアの反対側から切羽詰まった複数の呼ぶ声がしている。斧神はひっそりと笑った。
 お前たちの希望は、ここに居る。

 斧神の触腕がぐったりと力の抜けた明の首筋を這った。視線を動かし、明はなんとか自分を拘束する男を見上げた。息をはずませ、乱れた衣服を整えることも難しいようで、絡みついた腕の中で、与えられる快感に小刻みに体を震わせていた。
 明は雨が降ってきたのかと思った。ここは地下であるから、あり得ないことだった。湿気で天井にできた水滴が落下し、明の頬に当たった。床に雫が落ちる音がした。
 扉を叩く音が遅れて明の耳に届く。

「みんな…」

 その口から嬌声がこぼれ出た。吸盤が吸いついたところが痺れた。身体に巻きつけられた斧神の腕が、感じやすいところを何度もこすった。

「あっ、あっ」

 手で口を押さえても声はあふれた。下も、上も、男の触腕にいいようにされて、体は快感を喜んで受け入れた。頭が拒んでいるのに、ひらかれた下半身はどろどろに溶ける。
 衣服の隙間に忍び込んだ複数の腕が明の肌を愛おしげに撫でる。汗で髪がうなじに張り付いていた。明は呼吸を落ち着かせようとした。
 どこを触られても、官能的な欲望を刺激される。

「俺は、ここに、」

 斧神が遠慮のない動きで、下着の中の硬くなった性器をしごいた。明は歯を食いしばった。頭が霞みがかり、腰が引けて、手が拳の形を作った。
 舌が震えた。
 口を閉じる。頭がいっぱいになる。

「ーーっ…」

 脚の間にもぐりこんだ腕が、執拗に後ろの穴をくすぐり、吸盤が尻の間をこすった。何度も。しつこく。
 明の指に力が入らなくなった。口の中が乾き、唾液が粘り気を増した。

「ーー明さん…!」

 扉は開かない。斧神はどのような邪魔者も入れるつもりはなかった。何者も、この愉しみを邪魔することはできない。冷たかったはずの地下に熱がこもり、自らの愛撫に上昇する相手の体温がたまらなく斧神の心を満たした。
 明は苦しかった。いやらしい気持ちで、気が変になりそうだった。殺意と欲情が交互に点滅し、終いには混ざり合って、正体がわからなくなった。
 部屋が暗い。

「てめぇなんか…今に、刺身にして…」

 性器に吸いつく斧神の触腕が明の腰を痙攣させた。
 一人で訪れたのが、そもそもの間違いであった。

 むき出しになった腰が揺れはじめ、斧神は興奮にますます熱を入れて明の身体を犯した。もぐりこんだ交接腕が、とろけた肉壁をこすり、入り口を出入りした。

「ひ、ン、んっン」

 皮膚の表面を乾燥から守る役割を果たす体液が、明の体にも染み込むほど、男の腕という腕が明の体じゅうに絡みついて、明の嗅覚はにおいでおかしくなっている。気持ちが体に追いついていないのに、肉体は相手に吸いつくように悦びを感じている。
 先端の生殖器が深い奥にぶつかって、思わず高い声で喘いだ。そのまま幾度も同じ場所を突かれる。

「やめてくれ…ッ、やら、アッ、アッ」

 全身がビクビクと震え、快感を逃そうと男の腕の中で力一杯もがいた。いくつもの絡みついた長い手足がそれをさせなかった。
 斧神は手を緩めない。

「やあぅッ…!」

 乱暴に揺さぶられたら頭が真っ白になる。擦られ過ぎたあまりに、同じところが腫れていた。吸盤が内側の肉に擦れて、その感覚が明の脚の間から透明な体液を滴らせた。斧神は、まだ人間であった頃なら、きっとそこにしゃぶりついただろう。快感であふれた体液が明の腿の内側を伝った。斧神の腕の先がすぐにそれをすくい上げる。
 明の体の熱が、斧神に伝染するようだった。こんな快楽は知らない。

「折れてくれないか」

 斧神が囁いた。
 かろうじて首を振る明の腰は、先ほどからずっとわずかに揺れている。
 長い時間触られなかった性器がポタポタと先走りをこぼしていた。触って欲しかった。両手を拘束されていなければ、今すぐにでも自分でしごき上げたい。

「俺にできることならば、何でもしてやる」

 伸びてきた触腕が勃ちあがった性器をかすめる。同時にまた奥を深く突かれ、明が叫んだ。
 触ってくれ、と叫んだ。

「仲間になるのか」
「斧神っ…斧神…!」
「明」

 恥も矜持も手の届かないところにあった。明はその瞬間、全身で、本能で、初めて男を誘うことを覚えた。もともと体の中に存在した性が、友の手によって乱暴にこじ開けられた。
 明の体が体内の生殖器を締めつけた。大蛸の腕の巻きついた腰を、欲望の求めるままに揺すった。答えなどなかった。とにかく、早く、すべてが欲しかった。
 男の全部が欲しい。

「頼むっ…斧神ッ…」

 泣きじゃくる明の性器に触腕が巻きついた。吸盤が吸いついて、濡れた性器を一気に上下にしごき上げた。明が悦びの声を上げ、全身を震わせた。
 性器に巻きつけた腕を止めないまま、交接腕が明の奥を暴く。淫らな音が地下に響き渡る。男が突き上げる動きに合わせて明の腰が揺れた。
 涙が頬を伝う。肉壁が甘くとける。

「あ、あっ、ぅあぁ…っ♡」

 腹を締めつける腕が肋骨の上を滑った。奥の腫れた部分にしつこく男の先端がぶつかった。やわらかい場所をごりごりと擦る生殖器に、明の下腹がうずき、続けて下半身が痙攣した。
 明の体に巻きついた腕に力が入った。互いが興奮に息を荒くし、同じことしか考えていなかった。

「斧神ィっ…!」

 真っ赤に充血した敏感な先端を強く握られ、明の体じゅうを強い快感が襲った。これ以上ないほど、きつく体内の男を締めつける。
 水があふれるように、感情と欲望の釣り合いが壊れる。

「…強情な男だ」

 射精が長かった。明の体内は、断続的に斧神を締めつけた。

 それから何度も繰り返し、男の吸盤は明の体内を味わった。何もかも終わる頃には、地下の室温は上がっていた。
 大蛸は雌を自分の巣へと大事に連れて帰った。二度と離さなかった。

2017.10.29

書いてる最中、頭の中でずっとタコ神様と呼んでいました。