贅沢な血

※斧明Rー18。明が斧神を人間軍に引き込めていたらのifルート。ほんのり亮→明成分が入っています。捏造、性的描写にご注意ください。

 黒々とした闇のなかを進むのは、自分の足音一人分だけだった。なるべく静かに歩かなければならなかった。砂利を踏む靴音に注意し、集落の人々が眠る木々の下を通った。木の上の幾つもの家はどれも灯りを落とし、家々の屋根を覆う森はおどろおどろしいほどの深い闇に包まれている。
 手につかんだ刀の鞘がぬるく温度を持っていた。夜の気配が空気に満ち満ちていて、肺にまで湿った空気が染み込む感じがした。ずいぶんと遅い時刻で、気温は過ごしやすくちょうど良いぐらいだったが、腋の下に汗をかいていた。
 木の陰に何かがいるようにも見えた。が、ただの気のせいである。足を止めずに歩いた。いつのまにか唇を引き結んでいる。
 視界に映るすべての家の灯りが消えていることを確認した後、たどり着いた木々の奥で立ち止まり、もう一度背後を振り返った。それから地下室へと通じる洞穴の入り口に、忍び込むようにして身を滑りこませた。

 松明は消されており、洞穴内は完全な闇に支配されている。こんな入り口近くで明かりを灯すわけにはいかない。壁に手を当てて奥へと向かう。知っている道だ。覚えているから、平気だった。
 しかし呼吸は徐々に乱れつつある。
 足を踏み外さないよう、下へ下へと、慎重に地下へ下っていく。歩く度に足音が石壁に反響した。湿気が多い。じめじめとした壁の感触が、時たま体を支える手を滑らせかける。洞穴の入り口はもはや見えなくなっていた。
 俺は唾を飲み込んだ。口の中がカラカラだった。
 一番下までは、あと少しあった。それでも呼吸を落ち着かせるために途中で立ち止まらなければならなかった。右手で胸の上のシャツを握った。心臓が鳴っていた。

 聴こえてくる音があるのに、静けさが耳に痛いほどだった。
 底の方から息づかいがきこえてくる。
 俺が立ち止まっていることに、ヤツは気がついている。

 対価、ということを考える。支払わなければならない、報酬、ということについて、考える。自らが要求した結果に、ついて回る代償について。考えたことはあったか。
 わからない。考える暇は、なかったような、気もする。そんなことを考えながら、刀を振るえやしない。

「お前がそうしてきたのだ」

 男は言った。その日、鉄格子越しに今一度対峙した友は、落ち着いた様子で地面に座り、被り物を通して声を発し、俺と話した。
 背後に立つ師は、黙って俺たちの会話を聴いていた。何も言わなかったが、牢の内側の男のほんの些細な動きまで、仮面の下の目が追っていることを知っていた。

「…どういう意味だ?」
「どの選択にも、代償はある、という話だ」

 目の前の格子がなんの意味も持たないことは互いに理解していた。それでもこの男は、師の申し入れを受け入れ、自分から進んで檻の中に入ったのだ。
 俺はさらに鉄格子に近づいた。後ろで師が動く気配がした。

「俺は嘘は言わない」

 目の前の男に言い、俺は山羊の頭を見下ろした。

「あんたが俺を信じてくれたんだから、必ず、期待には応えるつもりだ」

 声に力を入れた。

「だから、俺たち人間のために戦ってくれ」

 背後で松脂のはじける音がし、松明の火が黒光りする山羊の鼻を艶やかに照らしている。獣の毛皮はもともとの獣の毛の色からは離れていた。経年変化だけではない。黒く硬くなった毛皮は油を塗ったようだった。血を吸わせ過ぎているのだ。
 男は立てた片膝に手のひらを置き、こちらをじっと見た。兜の下に隠れたあの単眼が、俺と、その後ろに立つ師を観察していることがわかった。
 殺気は感じられず、物静かな雰囲気は、初めて会った時のことを俺に思い起こさせる。仲間にはなれないと言った。戦闘中の激しい熱からは想像し難い静けさで、穏やかに座っている。
 自分がどこに居るのか、どういうふうにこれからを過ごして行くのか、そういったことにまるで興味がないようだった。そう見えるだけなのかもしれない。
 山羊の鼻がわずかばかり持ち上がった。

「血はどうしている」

 俺は一瞬、何のことを訊かれているのかがわからなかった。
 後ろから肩を掴まれ、師が俺の横に来た。そこで、その問いが師に向けられたものであるということに気がついた。

「以前と変わらぬ」
「…」
「この先も、変えるつもりはない。ワシはな」

 ずっと上の位置にある仮面を見上げた。過去に弟子であった男を見下ろす師の表情はうかがえない。斧神は少しの間黙っていた。
 師匠の手はまだ俺の肩に置かれていた。
 斧神が呟く。

「…相変わらず、いかれた男だ」

 体の横で軽く拳を握った。
 血。そうだった。そうだ。

「貴方と違い、飲まなければ、俺は立ち行かん」
「…」
「わかっておる」

 呼吸が浅くなるのを感じた。置かれた手が俺の肩をさすった。「何とかしよう」
 師はそう言うが、それが難しいことを俺も知っているし、師自身もわかっているに違いなかった。そして、目の前の男もそれを知っている。

(血)

 師の手が俺のうなじを掴むように触れた。胸が膨らんだ。
 男へと手を差し出したのは俺であり、その手を握り返したのも、相手だ。人間のもとへ戻って来てくれと頼んだ俺の声を、この男が何を思って聞き入れてくれたのかはわからないが、それでも男は武器を手から離し、俺たちと会話をしている。呼びかけに応えてくれた。
 師は黙っていた。拒絶することもなければ、俺の行ないや男の心変わりを否定することもしなかった。処遇を決めるにも少しの時間が必要だと、師がそう伝えた時も、男は自ら檻に入った。ただそれは、全体を納得させるには程遠い対応だった。この男が刈り取ったはずの途方もない命の数を、人々は強く記憶している。
 誰がこの男のために血を流すというのか。

(誰がーー)

「斧神」

 前に出た。動いたことで師の手が肩から離れた。「明」
 山羊の首が俺の顔を見上げた。指で鉄格子に触れた。冷たい格子を掴んだ。ひんやりとしている。

「俺の血を飲め」
「……」
「あんたが好きな時に、好きなだけ飲め」
「明」
「師匠、誰の血も流させるわけにはいきません」
「急くな、明」
「決まりだ」

 格子を掴む指先に何かが触れた。斧神が立ち上がっていた。内側から伸ばされた男の手が、俺の指に上から重なった。地下牢の中の薄暗がりから、死んだ獣の無感情な眼がこちらを見下ろしていた。
 目の前に立たれると、より一層その大きさが強調された。並はずれて大きな体が。

「足りないだろうが、なんとか俺一人の血で、まかなってくれ」

 斧を握り続けてきた指はかたく、岩のようにごつごつとした手をしている。地下に長時間居るからか、触れられた場所からは温度は伝わってこない。
 どうしてか小さかった時のことを思い出す。子どもの頃、兄と動物園の檻の中に見た動物は、こんなふうだった。幼い自分にこんなふうな気持ちを抱かせた、気がする。
 遺伝子を引き継いできた生き物の持つ、強い生命の力。
 男の指が、格子を握っていた俺の指を包んだ。

(進化などでは、ない)

 こんなものが、進化である、はずがない。
 しかし。

「十分だ」

 男が言った。
 背後に立つ師の体から、急速に力が抜けていくのを感じた。俺は手を下ろした。

 新たな諍いが生じるのを避けるために、師に近い人間と数人の見張りにしか、この「供給」については知らされなかった。師は長い時間、二人きりで俺の前に座っていたが、最後にはなにも言わずに立ち上がった。幼馴染たちや亮介には、とても話せる事柄ではなかった。誰にも気づかれないよう夜中に寝床を抜け出すのは、苦労した。勘がいい亮介が起きることもあった。
 斧神は待っていた。訪れるのは真夜中だった。
 刀はいつも身につけていた。訪れる日の晩だけは見張りを立てられるのを拒んだ。俺が、頼んだ。

「一人か」

 斧神は毎回尋ねる。
 俺は鍵を開けて、牢の内側に入る。

 首を振った。熱い。どこが熱いのかも正しく判断をつけられない。強い衝動をどこにも逃せず、反射的に振り上げた拳が、いともたやすく地面へと押さえ込まれる。
 ふたたび、たとえようもない感覚が全身を襲う。口からこぼれ出た声が石造りの地下牢に反響し、とっさに口を閉じた。出るものを我慢したら、今度は涙が滲んだ。ぼやけた視界で男の笑い声を聞いた。

「安心しろ。上には、届かん」

 温かく濡れたものが背中に押し当てられ、ゆっくりと肌の上を這った。俺自身がつけた切り傷を舐める、斧神の舌だ。
 分厚く、大きな舌が緩やかに、傷口からあふれ出した血を執拗に舐め取る動きに、後ろからのしかかる男の体へ空いた方の手をやった。自分の手が震えていた。
 牢の外側で燃える松明が、地下の地面を照らしている。昨晩降った雨が地表から染み込み、水滴が落ちて作ったであろう水たまりがある。

「…、…」

 言おうとした様々な言葉が、喉から出かけた先から形をなくす。唾液でべっとりと濡れた背中が痺れている。
 男は手を振り払わなかった。かわりに太い腕が胴体に回され、より一層互いの体が密着した。
 小さくはない傷口を、舌の先がぞろりと舐める。じんじんする。

「…いい血だ」

 まばたきをすると、ちぎれた涙が目頭から鼻の横を伝った。
 痛みなど、ほとんどない。痛くもないのに。一体何を感じて、自分は泣いているのだろうか。

「嬉しく、ね…っ」

 傷に吸いついた斧神の、熱が、唾液が、血管を通って自分の体に染み込むような、そんな気がした。後ろへ伸ばしていた手にだんだんと力が入らなくなる俺に対して、男の抱く力は徐々に強まってくる。
 のしかかった相手の腰が俺の下半身と重なる。強く密着する。

「よく眠れないんですか」

 顔を上げた。不意に眼球を直接さした光に目をすがめた。ずっと俯いていたせいで、太陽光がひどく眩しかった。目の前に立つ人物の顔は逆光で見えづらかった。
 でも、声ですぐに亮介だとわかる。

「?」

 両手を水から上げた。洗濯桶の端に手を置いた。川の水はまだ冷たく、浸かっていた指先から手首のあたりまでが、じんとしみるように冷えている。
 俺たち二人の周囲では、村の女たちがそれぞれ洗濯に勤しんでいる。

「何のことだ」

 亮介の顔のあたりを見上げて言った。こちらを見ているのか、桶の中を見ているのか、視線がどこに向けられているのかがわからなかった。
 日が眩しい。

「どこへ出かけているんですか」

 亮介の声は低かった。
 洗濯桶のふちに置いた手に力が入った。桶を掴んだ。指がかじかむ。
 相手が、この年下の男の、普段の明るい表情からはかけ離れた顔つきをしていることがわかった。

「…冷えると、ションベンが近くなるんだよ」

 俺が言った。冷たい水とは対照的な暖かい風が吹き、髪があおられた。軽く舞い上がった砂埃に目にごみが入りそうになる。
 まばたきをする。

「長いションベンですね」

 視線を逸らさなかった。逸らせないでいた。
 顎の下が冷たく、首筋の血管が静かに収縮するのを感じた。

「……おう」

 亮介が桶の中に視線を落とした。目が慣れてきた。どんな顔をしているのかも、わかるようになってきていた。
 意味もなく、下ろした手で水の中の衣類を押さえた。
 一瞬のうちに迷いが頭の中をめぐった。何を隠す必要もないのだろうか。間違ったことをしていないのならば、何を隠す必要があるというのだろうか。
 何も後ろめたいことなんか。俺には、なにも。

(「こっちにきて、飲ませてくれ」)

 くっと眉をしかめた。衣服に隠れた背中の傷口が疼き、顔を伏せた。言葉にできない感覚が、腰から股間までを瞬間的にじわりと熱くした。触られた時の記憶がよみがえった。
 数秒遅れて、顔に一気に熱が集中した。

「……何でなんですか」

 真っ赤になっているだろう顔を持ち上げた二の腕で隠した。隠しきれない変化を見つめられていた。何も口にできなかった。
 その問いかけには答えられない。
 火照る頬の熱さがうっとうしい。

 背中が傷だらけになってくると、今度は前側に刃を入れるようになった。肋骨の隙間に滑り込ませるようにしてつけた切り傷は、すぐに男の巨大な口に覆われ、空気に触れる間もなく大量の唾液で濡らされる。あふれ出した血と唾液は混ざり合わさり、男が飲みきれなかった薄桃色の液体がわき腹を伝うのを、息を荒くしながら見下ろした。
 地下の閉鎖感や、隅の暗闇は、日に日に気にならなくなってきていた。松明の明かりさえも、消してしまってもいいのではと、思いかける。すぐにその悪い考えを頭から振り払おうとするが、その願望はなかなか離れてはくれない。
 光がなければ。本当の暗闇の中でなら。
 じゅうぅ、と強く傷口を吸われ、思わず股の間の男の胴体をきつく両腿で挟んだ。視界がチカチカした。痛みの感じ方はとうに麻痺していた。かわりに感じるのは。
 男がますます熱をこめて傷口をしゃぶった。抗い難い快感に、背中が丸まった。声が出た。

「ッ、ぐ…」

 大きな手に反対のわき腹を押さえられていた。平たく分厚い舌が、幾度も傷を舐め上げた。こらえきれずに斧神の頭部を両手で掴んだ。にぶい痛みが走ったと思ったら、分身の口の一つに指が入っていた。
 甘噛みをする小さな歯に、なぜだかわからず、泣きそうになる。
 脚の間にいる男がさらに上半身を乗り出し、わき腹から胸へと口を移動させた。慌てて男の顔に当たる位置に震える手を突っ張った。

「駄目だ…! おい…っ」

 俺の言葉が聞こえないかのように、斧神は迷わず、無傷の胸に吸いついた。
 腰が浮いた。股間が男の腹にぶつかった。

「〜〜ッ!」

 口を手で押さえる。縦に割れた裂け目が胸に押し当てられ、胸の突起を器用に、きつく吸い上げた。激しく首を振った。無意識のうちに腰を揺すり、衣服越しに男の腹へ硬く勃起した性器をこすりつけている。
 裂け目の内側で舌が淫らに蠢き、胸の皮膚がふやけるほど、唾液が染み込んでいく。男は口を離さない。
 伸びてきた腕に口を塞ぐ手を掴まれた。強引に引き剥がそうとする力に抵抗する。力では勝てない。

(クソ、クソッ…クソ!)

 相手の歯が乳首を噛んだ。不意打ちに緩んだ力で、乱暴に引き剥がされた手が自分の唾液で糸を引いた。
 吸い上げられる音が石壁に響く。

「っあ、あ、やだ、やぅう…!」

 男の上半身が体の上に乗り上がり、すでに相手の興奮も同じように押しつけられていた。腰巻き越しに擦りつけられる硬さに、頭に薄桃色の霞がかかってまともにものが考えられない。巨体に押さえつけられ、重みで体が圧迫される。息苦しい。
 斧神が荒く腰を揺すった。甘い痺れでつま先まで震える。

「ンぁ、あっ、ひ」

 口内に溜まった唾液が口の端からあふれ出し、耳の横を伝い、体の下の粗末な毛布に垂れ落ちた。目をぎゅうっとつむった。肉欲が暴れている。今すぐ。今すぐ、欲しいものがあると叫んでいる。全身が。
 互いの性器が隔たりを通してこすれあうことが、もどかしくてたまらない。
 拳を握りしめ、粘ついた口を開けた。

 今日、刀は、どこにやったんだっけ。

「勘弁、してくれッ…」

 上から覆いかぶさってきた男の口が、俺の口にかぶりつく。大きすぎる舌に口の中をかき回されたら、思考が根こそぎ奪われる。

 対価、ということ。支払わなければならない、報酬、ということ。自らが要求した結果に、ついて回る代償について。これがその代償だというのだろうか。俺の選択は、間違っていたんだろうか。しかし考えたところで意味がない。どこでどう間違えたのか、記憶をたどろうとも、今の自分にはわからないのに。
 わからない。どうするのが一番よかったかなんて。
 何も。

 結局、俺に差し出せるものなら、何だって差し出したんだ。

 官能的な欲望が体の芯から内側の中身をぐずぐずに溶かしていく。抱かれた体は体格の差でほとんど押しつぶされかけていた。でも、後ろから腰を打ちつけられたら、もう、どうにもたまらなかった。
 内腿を汚す男の先走りが滑りをよくする。閉じた両脚の間に突き入れられる巨大な陰茎が、濡れた股間を執拗にこすった。視界が滲む。快感にくねる腰が無骨な手に掴まれる。ひどい音が立つ。

「あっ、あっ、あッ」

 股の間を出たり入ったりする男の陰茎が、男が動く度に玉や性器の裏筋を前後にこすりあげていく。わき上がる強すぎる情欲と快感に腿が震えている。ぬるついたそこを何度も、何度も突いて、獣のように男が揺さぶる。熱い陰茎が内腿を犯す。

「あつ…あつい、頼む、ゆっくり…っ」
「熱くも、なろう」

 牢の外の火が弱まってきていた。地下の空間の闇が濃くなり、自分を組み敷く背後の男の存在が、まるで夜の化身のように感じられた。
 肉がぶつかり、硬い陰茎が奥まで突き刺さった。頭のてっぺんまで痺れさせる快感が突き抜け、甘くとけた声が口からあふれた。何度も勢いよく叩きつけられる腰に、力の抜けた下肢を力強く引き寄せられる。
 深くまで密着する。

「いぁあっ……!」

 その体勢のまま男が腰を揺すり上げた。身悶えする体を強い力で抱き込まれ、やわらかい腿の隙間で、肉に埋まった陰茎がねっとりと味わうように肌を撫でた。下肢が痙攣した。よだれをこぼした。股の間から体液が滴り落ちるのがわかった。頭がどうにかなりそうだった。

「おのがみいぃっ…」

 手のひらが地面に敷いた毛布の上を滑る。膝が痛い。陰茎が強い興奮を訴えている。それでも男であることを忘れかけている。忘れそうになる。
 体に回された男の腕に、力のない片手で触れた。
 舌が回らない。

「噛んで…!」

 こんな快感を、自分は知らない。どこに連れていかれるのかもわからない恐怖心が、強すぎる快感に支配されて見えなくなる。
 治りかけていた背中の傷に、斧神が噛みついた。鋭い痛みと強い快感で、噛まれたと同時に射精した。歯が食い込む感触に脚がぶるぶると震えた。地下に響く嬌声が自分の声ではないようだった。
 動物の声のようだった。
 止まらない精を男の手のひらが陰茎ごと覆った。

 血を吸われながら、交わると、頭が真っ白になる。とろけて、使いものにならなくなる。肉体的な悦びには果てがない。

 刀はどこに置いてきてしまったのだろう。
 もう必要もなかった。あらゆる迷いも、勇気も。

2017.12.28